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気不化津:水液代謝の停滞

気不化津とは、東洋医学において、体内の水分の巡りが滞ってしまう病態を指します。生命活動を支える根本的なエネルギーである「気」が弱まり、その働きが衰えることで起こります。この「気」は全身をくまなく巡り、体を温めたり、栄養を運んだり、不要なものを体外へ出したりと、様々な生命活動を支えています。特に、温める作用を持つ「陽気」が不足すると、水分の代謝が滞り、「気不化津」の状態を引き起こします。 水は生命の源であり、体内の水分は、栄養を体の隅々まで運び、不要な老廃物を体外へ運び出し、体温を適切に保つなど、生命維持に欠かせない役割を担っています。この水分の代謝が滞ると、体に様々な不調が現れます。例えば、むくみや冷え、尿の出にくさ、だるさ、食欲不振などが挙げられます。これらの症状は、体内の水分バランスが崩れ、余分な水分が体に溜まってしまうことで起こります。 現代医学では、これらの症状は代謝機能の低下や循環器系の不調として捉えられることが多いです。しかし、東洋医学では、単に体の物質的な側面だけでなく、「気」という生命エネルギーの働きに着目します。気は目に見えないものですが、東洋医学では、この「気」の巡りを整えることで、体全体の機能を活性化し、健康を回復できると考えています。気不化津はまさに、この「気」の働きの重要性を示す代表的な例と言えるでしょう。気の流れを良くし、陽気を補うことで、水分の代謝を促し、健康な状態へと導くことができます。
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血厥:怒りの炎が引き起こす突然の意識消失

血厥とは、東洋医学の病名の一つで、突然意識を失うことを厥といい、その中でも怒りの感情がきっかけで起こるものを指します。激しい怒りを感じると、体内の気が乱れ、血と共に勢いよく上へと逆流します。すると、脳への血液の供給が一時的に滞り、意識の消失や手足の痙攣といった症状が現れると考えられています。 この血厥は、単に意識を失う他の厥とは異なり、顔色が赤くなるという特徴があります。また、脈を診ると強く張り詰めた状態、いわゆる弦脈と呼ばれる状態を示します。これらの症状は、怒りのエネルギーが体内で過剰に高まり、血の流れを激しく揺さぶっていることを示しています。 血厥の病態を考える上で重要なのは、肝という臓腑です。東洋医学では、肝は怒りの感情と深く関わるとされています。肝の働きが過剰になると、気が上昇しやすく、血も一緒に上へ昇ってしまいます。これが脳へ行く血液を滞らせ、厥を起こすと考えられています。 治療としては、肝の気を鎮め、血の流れを調えることが重要になります。具体的には、逍遙散や丹梔逍遥散といった漢方薬が用いられます。これらの漢方薬は、肝の熱を冷まし、気の巡りをスムーズにすることで、血厥の症状を改善します。 血厥は、感情の乱れが体に直接影響を与えることを示す代表例です。東洋医学では、心と体は一体であると考えます。心の状態が体に影響を与え、体の状態が心に影響を与えるという相互作用を常に意識することが大切です。血厥は、この心身一体の考え方を理解する上で重要な概念と言えるでしょう。
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氣厥:情動と気の逆乱

氣厥とは、東洋医学の考え方に基づく病態の一つで、突然意識を失ってしまう厥の中でも、気の巡りの乱れが主な原因と考えられています。この「気」は、生命エネルギーのようなもので、体中に巡り、体と心の様々な働きを支えています。まるで植物に水をやるように、この気が全身に行き渡ることで、私たちは健康を保つことができるのです。 氣厥は、この気が正常な流れを失い、本来下へ向かうべき気が上に逆流してしまうことで起こると考えられています。激しい喜怒哀楽や、長期にわたる精神的な負担、過労などが引き金となり、気が乱れ、上逆することで様々な症状が現れます。代表的な症状は突然の意識消失ですが、それ以外にも、心臓がドキドキしたり、息が苦しくなったり、目の前がぐるぐる回ったり、冷や汗をかいたり、顔が青白くなるといった症状を伴うこともあります。 これらの症状は、現代医学でいう失神や過呼吸発作と似た部分もありますが、東洋医学では、単なる一時的な意識の消失として捉えるのではなく、体全体の気のバランスが崩れた状態として考えます。西洋医学では症状を抑える対症療法が中心となることが多いですが、東洋医学では、氣厥は体からの大切な警告と捉え、根本的な原因を探り、体質改善を図ることで、再発を防ぐことを目指します。具体的には、気の巡りを整え、心を落ち着かせ、体質を強化する漢方薬や鍼灸治療などが用いられます。日頃から、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、ストレスを溜め込まない生活習慣を送り、心身の調和を保つことが大切です。
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風厥:突然の意識消失

風厥とは、東洋医学において、突然気が遠くなり意識を失ってしまうことを指します。まるで風が体に吹き込み、その勢いで倒れるように見えることから、この名前が付けられました。これは、現代医学でいうところの失神や意識消失に似た状態です。しかし、東洋医学では、ただ意識がなくなるという表面的な現象だけでなく、その背後にある体の状態や体質、原因までを深く掘り下げて考えます。そのため、同じように倒れたとしても、その起こり方や症状、その人の体質によって、治療法は千差万別なのです。 風厥は、体に風が侵入することで起こると考えられています。この「風」とは、目に見えない外からの邪気のことで、特に春先に多く発生しやすいとされています。春は自然界の気が活発になり、風の影響を受けやすい季節です。この風が体に侵入すると、体の気の巡りが乱れ、気が上って頭に昇りすぎたり、逆に気が足りなくなって頭に血が巡らなくなったりします。これが、突然意識を失う原因となると考えられています。 また、風厥は、体質の弱さや、過労、睡眠不足、栄養不足といった生活習慣の乱れ、強い精神的なストレスなども原因となります。これらが積み重なることで、体のバランスが崩れ、風が侵入しやすくなります。 風厥を単なる一時的な症状として軽く見てはいけません。意識を失うということは、体に何らかの異常があるサインです。根本原因を探り、適切な養生をすることが重要です。繰り返し意識を失う場合は、命に関わる重大な病気が隠れている可能性もあるため、早めに医師に相談しましょう。東洋医学的な視点を取り入れることで、体質改善や生活習慣の見直しなど、根本的な解決策を見つけることができるでしょう。
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臓厥:内臓の冷えから起こる症状

臓厥とは、東洋医学における概念で、体の奥深くにある臓腑、特に脾臓や腎臓といった臓器の温める力が弱まることで起こる様々な症状を指します。この温める力は「陽気」と呼ばれ、生命活動の源となる大切なものです。陽気は、体全体を温め、各臓腑の働きを活発にする、いわば生命の炎のようなものです。この陽気が不足すると、臓腑が冷えて本来の働きができなくなり、様々な不調が現れます。 例えば、脾臓は飲食物から栄養を吸収し、全身に運ぶ役割を担っています。脾臓の陽気が不足すると、栄養の吸収がうまくいかず、顔色が悪くなったり、疲れやすくなったり、食欲がなくなったりします。また、手足が冷えたり、お腹が冷えて下痢を起こしやすくなったりすることもあります。腎臓は体内の水分代謝や成長、発育、生殖機能に関わる大切な臓器です。腎臓の陽気が不足すると、体がむくみやすくなったり、冷えを感じやすくなったり、腰や膝に力が入らなくなったりします。さらに、耳鳴りやめまい、物忘れといった症状が現れることもあります。 現代医学の考え方では、臓厥は低血圧や血液循環の不調、消化器系の働きの低下などといった状態と関連付けられます。しかし、東洋医学では、臓厥は単なる一時的な冷えとは異なり、臓腑の機能低下を伴うより深刻な状態だと考えます。そのため、表面的な冷えを取り除くだけでなく、不足した陽気を補い、臓腑の働きを根本から立て直す治療が重要になります。もし、これらの症状が続くようであれば、早めに専門家に相談し、適切な養生法や治療を受けることが大切です。放置すると、慢性的な不調につながる可能性もあるため、早期の対応が健康維持のために不可欠です。
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藏厥:内臓の陽気が不足するとどうなるか

藏厥(ぞうけつ)とは、東洋医学の考え方において、体の中の臓腑、特に脾臓(ひぞう)、腎臓(じんぞう)、心臓(しんぞう)の温める働きを持つエネルギーである陽気が衰え、本来の働きが弱まることで起こる、突然意識を失う、脈が弱くなる、手足が冷えるといった症状を伴う厥逆症(けつぎゃくしょう)の一種です。厥逆症とは、急に意識がなくなったり、脈拍が触れにくくなったり、手足が冷たくなったりする症状を指します。藏厥は、生命の源である陽気が不足することで、体を温め、正常な働きを保つ力が弱まり、様々な不調が現れる状態と言えます。 主な原因として、長期にわたる疲れや長く続く病気、過度な心労、偏った食事、冷えなどが挙げられます。これらの要因が重なることで、臓腑の陽気が少しずつ失われ、藏厥につながると考えられています。特に、脾臓は食べ物から栄養を取り入れる働きを、腎臓は生命エネルギーを蓄える働きを、心臓は血液を体中に送る働きを担う大切な臓腑です。これらの臓腑の陽気が不足すると、生命活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。 藏厥は、一時的な症状ではなく、体の根本的な衰えを示す兆候と言えるでしょう。命に関わることもある重篤な症状であるため、東洋医学に基づいた適切な養生法を行い、臓腑の陽気を補うことが重要です。例えば、体を温める食材を積極的に摂ったり、ゆっくり休養を取ったり、適度な運動をしたりすることで、陽気を養い、藏厥の予防、改善に繋がると考えられています。また、症状が重い場合には、専門家の指導のもと、漢方薬や鍼灸治療などを検討することも有効です。
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薄厥:突然意識を失う病気

薄厥は、突然意識を失い倒れてしまう病気です。まるで薄い霧がさっと掛かるように、一時的に意識が遠のくことからこの名前が付けられています。多くの場合、数秒から数分で自然に意識が戻り、後遺症も残らないことが多いですが、倒れた際に頭を打つなど、二次的な怪我の危険性も高く注意が必要です。 薄厥の主な症状としては、目の前が暗くなる、めまい、冷や汗、顔面蒼白、吐き気などがあげられます。これらの症状が現れた際には、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。症状が似ている他の病気との区別も重要になります。中には、命に関わる重大な病気が隠れている場合もありますので、自己判断せず、必ず医師の診察を受けましょう。 西洋医学では、一時的な脳への血液供給の不足が薄厥の主な原因と考えられています。立ちくらみや、精神的なショック、過呼吸、咳、排尿などが引き金となることがあります。東洋医学では、気血の不足や流れの停滞、あるいは臓腑の機能低下などが原因と考えられています。体質や症状に合わせて、気血の巡りを良くする漢方薬の処方や鍼灸治療などが行われます。 日常生活においては、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、心身の健康を保つことが大切です。また、過労やストレス、睡眠不足なども薄厥の誘因となるため、これらを避けるようにしましょう。もし薄厥を繰り返すようであれば、車の運転や高所作業などは控え、安全な環境を確保することが重要です。医師の指示に従い、日常生活での注意点や予防策についても相談するように心がけましょう。
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中風の前触れ:前兆症を知って早めに対処

中風は、脳の血管に異変が起こり、脳の細胞が傷つくことで、体に様々な障がいが現れる病気です。突然発症するように思われますが、実は発症前に様々な兆候が現れることがあります。こうした兆候を中風前兆症と呼びます。中風は一刻を争う病気であるため、前兆を早く見つけ、適切な医療機関で診察を受けることで、後障がいが残る危険性を少なくできます。 中風前兆症は、一時的な症状であることが多く、すぐに消えてしまう場合もあります。しかし、決して軽く考えてはいけません。注意深く自分の体の変化を見ることが大切です。具体的には、片側の腕や足にしびれや力が入らない、ろれつが回らない、ものが二重に見える、激しい頭痛、めまい、ふらつきなどの症状が現れることがあります。これらの症状は、数分から数時間続き、その後消失することがあります。しかし、症状が消えた後も、必ず医療機関を受診するようにしてください。 こうした前兆は、血管が一時的に詰まることで起こります。この状態は一過性脳虚血発作と呼ばれ、中風の危険信号と言えます。中風前兆症が現れたら、すぐに救急車を呼ぶ、もしくは家族や周りの人に助けを求め、速やかに医療機関を受診することが重要です。早期発見、早期治療が中風による後遺症を最小限に抑える鍵となります。少しでも体の異変を感じたら、ためらわずに医療機関に相談しましょう。普段からバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、血管の健康を保つことも重要です。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある場合は、適切な治療と管理を続けることで、中風のリスクを減らすことができます。
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めまい:東洋医学からの考察

めまいとは、周囲がぐるぐると回っているように感じたり、自分自身が回転しているように感じたりする感覚を指します。東洋医学では、この回転する感覚だけでなく、立っていられないような不安定感、目の前が暗くなる感じ、ふわふわと宙に浮いているような感覚なども、全て「めまい」と広く捉えます。 めまいの症状は人によって様々です。平衡感覚が乱れるだけでなく、物が二重に見えたり、ゆがんで見えたりする視覚の異常を伴うこともあります。また、耳の奥で音が鳴る耳鳴りや、吐き気を催すこともしばしばあります。めまいは、時に不安感や恐怖感を伴い、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 めまいの原因も多岐にわたります。一時的な疲労や睡眠不足が原因で起こることもあれば、耳の奥にある内耳の異常が原因となっている場合もあります。また、脳の血管に異常が生じる脳血管障害や、体の機能を調整する自律神経の乱れが原因となることもあります。さらに、ストレスや精神的な緊張、貧血や低血圧、薬の副作用など、様々な要因が考えられます。 めまいは、重大な病気が隠れているサインである可能性もあります。そのため、めまいが続く場合や、繰り返し起こる場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。特に、激しい頭痛や手足のしびれ、ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は、緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診する必要があります。
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めまいと目のかすみ:東洋医学からの視点

東洋医学では、めまいをひとつの症状として捉えるのではなく、様々な要因が複雑に絡み合って起こるものと考えています。めまいは大きく分けて二つの種類に分けられます。ひとつは、自分が回転しているように感じたり、周囲がぐるぐると回っているように感じる回転性のめまいです。この回転性のめまいは、激しい吐き気を伴うことが多く、経験したことのある方はその辛さをよくご存知でしょう。もうひとつは、浮動性めまいで、ふわふわと宙に浮いているような感覚、あるいは立ちくらみのような、急に目の前が暗くなる感覚を指します。この浮動性のめまいは、回転性のめまいほど激しくはありませんが、慢性的に続くこともあり、日常生活に支障をきたすこともあります。 これらのめまいの種類を正しく見分けることは、適切な治療を行う上で非常に大切です。例えば、回転性のめまいは耳の奥にある内耳の不調が原因である可能性が高い一方、浮動性のめまいは自律神経の乱れや貧血といった別の原因が考えられます。東洋医学では、西洋医学的な検査に加えて、患者さんの体質や、めまい以外の症状、例えば頭痛や肩こり、冷え性といった症状も総合的に見ていきます。また、脈診や舌診、腹診といった東洋医学独特の診察方法を用いて、体全体のバランスの乱れや、エネルギーの流れの滞りを確認し、めまいの根本原因を探っていきます。めまいを引き起こしている根本原因を特定することで、体質改善を促し、症状の再発を防ぐことを目指します。単にめまいという症状を抑えるのではなく、患者さん一人ひとりの体質や状態に合わせたオーダーメイドの治療法を提案することで、心身ともに健康な状態へと導いていきます。また、普段の生活習慣における注意点や、食事療法なども指導し、患者さん自身が健康管理に取り組めるようサポートしていきます。
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東洋医学から見る耳痛

耳痛とは、読んで字の如く、耳に痛みを感じることを指します。痛み方は様々で、鋭く刺すような痛みや、鈍く重い痛み、時折痛む断続的な痛みや、常に続く持続的な痛みなど、症状の出方は人それぞれです。また、痛みを感じる場所も、耳の奥深くで感じる場合や、耳の入り口付近で感じる場合など、様々です。 さらに、耳の痛みだけでなく、他の症状を伴う場合もあります。例えば、耳鳴りや、ふらつきやめまい、熱っぽさ、音が聞こえにくいといった症状が現れることがあります。これらの症状は、耳痛の原因となる病気に関連している場合があるので、注意が必要です。 特に、言葉をうまく話せない乳幼児の場合、耳の痛みを訴えることができません。そのため、いつもと違って機嫌が悪くなったり、耳を触ったり引っ張ったりする様子が見られた場合は、耳が痛む可能性も考え、注意深く観察することが大切です。また、授乳や食事の際に、耳の痛みによって不快感を覚え、うまく飲み込めないといった様子が見られることもあります。 耳の痛みは、日常生活に支障をきたすだけでなく、放置すると病気が悪化し、重い病気につながる可能性もあります。例えば、中耳炎を放置すると、鼓膜に穴が開いたり、聴力が低下する恐れがあります。また、突発性難聴は早期の治療が重要であり、放置すると聴力の回復が難しくなる可能性があります。そのため、耳の痛みを感じたら、自己判断せずに、速やかに耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
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氣虛耳鳴:その原因と対策

氣虛耳鳴とは、東洋医学において生命エネルギーである「氣」の不足によって引き起こされる耳鳴りの一種です。この「氣」は、全身を巡り、体の様々な機能を支える根本的なエネルギー源と考えられています。まるで田畑を潤す水のように、この「氣」が不足すると、体全体の働きが衰え、様々な不調が現れます。耳鳴りもその一つであり、氣の不足によって耳の機能が低下することで起こるとされています。 氣虛耳鳴の特徴的な症状として、まるで蝉の鳴き声のような高い音の耳鳴りが挙げられます。これは「ヒーン」という音で表現されることが多く、静かな場所で特に強く感じられます。また、耳が詰まったような感覚や、音が聞こえにくくなるといった聴覚の低下を伴う場合もあります。さらに、氣の不足は耳だけでなく、体全体のバランスを崩すため、ふらつきやめまいといった症状が現れることもあります。 氣虛耳鳴の原因は様々ですが、加齢による体力の衰え、過労、慢性的な病気、精神的なストレスなどが主な原因として考えられています。特に、生まれつき氣が不足しやすい体質の方や、病気の回復期で体力が低下している方は、氣虛耳鳴を起こしやすい傾向があります。また、不規則な生活習慣や偏った食事、睡眠不足なども氣の不足を招き、耳鳴りの症状を悪化させる可能性があります。 氣虛耳鳴の改善には、不足した氣を補うことが重要です。東洋医学では、食事療法や漢方薬、鍼灸治療などが用いられます。食事療法では、消化の良い温かい食べ物を摂り、胃腸の働きを整えることが大切です。また、ゆっくりと休養を取り、心身をリラックスさせることも効果的です。症状が重い場合は、専門家の指導のもと、適切な治療を受けるようにしましょう。日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、氣を養う生活習慣を身に付けることが、氣虛耳鳴の予防と改善につながります。
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めまいと耳のトラブル:痰湿犯耳證を理解する

痰湿犯耳證は、東洋医学の考え方で、体の中に余分な水分や老廃物(痰湿)が溜まり、それが耳に悪影響を及ぼして様々な症状が現れる状態を指します。まるで耳の周りに濃い霧が立ち込めたように、ぼんやりとした不快感が続くのが特徴です。めまい、耳鳴り、耳が詰まった感じ、聞こえにくいといった症状がよく見られます。場合によっては、吐き気や頭痛を伴うこともあり、耳から液体が流れ出ることもあります。 このような症状が現れるのは、体内の水分の巡りが滞っていることが原因だと考えられています。例えば、水分の摂り過ぎや、脂っこいもの、甘いものなど偏った食事、体を動かす機会の少なさなどが、痰湿を発生させ、耳の不調につながるとされています。また、雨の多い時期や湿気の多い環境で症状が悪化することもあります。さらに、精神的な負担や疲れも、水分の巡りを悪くする要因となります。 痰湿犯耳證は、それ自体が一つの病気というよりも、他の病気の原因となったり、病気を悪化させたりする可能性も懸念されます。ですから、表面的な症状だけを抑えるのではなく、体質から改善していくことが大切です。生活習慣を見直し、痰湿が生じにくい体作りを心掛けることが重要です。そして、専門家の指導の下、自分に合った治療法を見つけることが、健康な状態を取り戻す近道となります。
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肝火燔耳證:耳のトラブルと心のつながり

肝火燔耳證とは、東洋医学の考え方で、耳にまつわる様々な不調が現れる病態のことです。この病態は、怒りや悩みといった精神的な負担、あるいは夜更かしや脂っこい食事といった体に良くない生活習慣が続くと、肝のはたらきが乱れ、体に「肝火」と呼ばれる過剰な熱が生じることで起こると考えられています。まるで火が燃え上がるように、この肝火は上昇しやすい性質を持っています。そして、その熱が耳にまで達すると、様々な症状が現れ始めます。 代表的な症状としては、耳鳴り、耳の閉塞感、めまいなどがあります。さらに、耳の痛みや、ひどい場合には鼓膜が傷つくこともあります。これらの症状は、西洋医学でいうところの外耳炎や中耳炎、メニエール病などと似た症状を示す場合もあります。しかし、肝火燔耳證は、単なる耳の病気ではなく、体の内側、特に肝の機能のバランスが崩れた結果、耳に症状が現れたものと捉えます。西洋医学的な検査で異常が見つからない場合でも、東洋医学的には肝火燔耳證と診断されることがあります。 肝火燔耳證の治療では、耳の症状を一時的に抑えるだけでなく、根本原因である肝火を鎮めることが重要です。具体的には、精神的なストレスを和らげたり、生活習慣を改善したりといった根本的な取り組みが必要となります。漢方薬を用いて、肝の機能を整え、体全体のバランスを取り戻すことで、症状の改善を目指します。また、鍼灸治療も有効な場合があり、体の特定の場所に鍼やお灸を施すことで、肝火を鎮め、気の巡りを良くし、自己治癒力を高めます。肝火燔耳證は、体の不調のサインです。耳の不調を感じたら、早めに専門家に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
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肝腎陰虚:陰陽のバランスと健康

東洋医学では、人間の体は陰と陽という互いに反対の性質がうまくつりあうことで健康が保たれると考えられています。陰は体の形を作るもととなるもの、静かな状態、冷やす働きなどを表し、反対に陽は体の活動、温める働き、体の機能などを表します。陰虚とは、この陰の要素が不足した状態を指します。体の中に潤いや栄養が足りなくなり、それと比べて熱の働きが強くなりすぎている状態とも言えます。 陰虚は様々な理由で起こります。たとえば、年を重ねること、働きすぎや過労、心労、体に合わない食事、長く続く病気などが陰虚を招く原因となります。陰虚の状態が続くと、体に様々な不調が現れます。代表的な症状としては、ほてり、のどの渇き、寝汗、めまい、耳鳴り、肌の乾燥、便秘などが挙げられます。また、精神的な面では、イライラしやすくなったり、落ち着きがなくなったりすることもあります。これらの症状は、陰の不足によって体内の水分や栄養が不足し、熱がこもることで引き起こされると考えられています。 陰虚を改善するためには、不足している陰を補うことが大切です。食事では、体を冷やし、潤いを与える食材を積極的に摂り入れるようにしましょう。例えば、豆腐、豆乳、豚肉、梨、きゅうり、すいか、海藻類などがおすすめです。また、辛いものや刺激の強いもの、脂っこいものは控えめにし、体を温めすぎる食べ物や飲み物も避けるように心がけましょう。生活習慣の見直しも重要です。十分な睡眠をとり、過労やストレスを避け、適度な運動を心がけることで、陰陽のバランスを整え、健康を維持しましょう。東洋医学では、病気になってから治療するのではなく、病気になる前に未然に防ぐ「未病」という考え方が重視されています。陰陽のバランスを意識し、日頃から体の声に耳を傾け、陰虚にならないように生活習慣を整えることが健康維持の鍵となります。
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腎陰虧虚:陰陽のバランスを整える

東洋医学では、生命エネルギーの源を「腎」と考え、この「腎」には「腎陰」と「腎陽」という二つの大切な側面があります。このうち「腎陰」は、体内の水分や栄養を蓄え、体にとって潤滑油のような役割を果たす「陰液」を生成する働きを担っています。この大切な「腎陰」が不足してしまう状態を「腎陰虧虚」と言います。 植物が水不足で枯れてしまうように、私たちの体も「陰液」が不足すると、生命力が弱まり、様々な体の働きが衰えてしまいます。この「腎陰虧虚」は、様々な不調を引き起こす原因となります。例えば、手足の裏が熱く感じる、のぼせやすい、肌や喉が乾燥する、寝汗をかく、めまい、耳鳴り、腰や膝がだるい、といった症状が現れることがあります。また、精神的な面では、イライラしやすくなったり、落ち着きがなくなったりすることもあります。 この「腎陰虧虚」は、年を重ねること、働き過ぎ、心労、長く続く病気、偏った生活習慣など、様々な要因で引き起こされます。特に、現代社会はストレスが多く、睡眠不足になりがちで、食事も栄養バランスが偏りやすいことから、「腎陰虧虚」の状態になりやすいと言えます。 東洋医学では、健康を保つためには「陰」と「陽」のバランスが大切だと考えています。このバランスが崩れると、体に不調が現れると考えられています。「腎陰虧虚」を理解し、普段から「陰液」を補う生活を心がけることは、健康な毎日を送る上で非常に大切です。