薄厥:突然意識を失う病気

薄厥:突然意識を失う病気

東洋医学を知りたい

先生、『薄厥』ってどういう意味ですか?漢字からなんとなく想像はつくのですが、はっきりとは分かりません。

東洋医学研究家

そうだね。『薄厥』は、急に意識を失って倒れることを指す言葉だよ。簡単に言うと、一時的な意識消失だね。 『厥』は倒れるという意味で、『薄』は軽いとか短いという意味を持っているんだ。つまり、『薄厥』は短時間の軽い意識消失状態を表しているんだよ。

東洋医学を知りたい

なるほど。『厥』が倒れるという意味なんですね。ということは、長時間意識を失ってしまう場合は『薄厥』とは呼ばないんですか?

東洋医学研究家

その通り。長時間意識を失う場合は『薄厥』とは区別される。意識消失の持続時間の長さによって病気が分類されることもあるんだよ。だから、症状をよく見て判断することが大切なんだ。

薄厥とは。

東洋医学で使われている『薄厥』という言葉について説明します。薄厥とは、急に意識を失って倒れる症状が特徴の、すぐに症状が現れる病気のことです。

薄厥とは何か

薄厥とは何か

薄厥は、突然意識を失い倒れてしまう病気です。まるで薄い霧がさっと掛かるように、一時的に意識が遠のくことからこの名前が付けられています。多くの場合、数秒から数分で自然に意識が戻り、後遺症も残らないことが多いですが、倒れた際に頭を打つなど、二次的な怪我の危険性も高く注意が必要です。

薄厥の主な症状としては、目の前が暗くなる、めまい、冷や汗、顔面蒼白、吐き気などがあげられます。これらの症状が現れた際には、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。症状が似ている他の病気との区別も重要になります。中には、命に関わる重大な病気が隠れている場合もありますので、自己判断せず、必ず医師の診察を受けましょう。

西洋医学では、一時的な脳への血液供給の不足が薄厥の主な原因と考えられています。立ちくらみや、精神的なショック、過呼吸、咳、排尿などが引き金となることがあります。東洋医学では、気血の不足や流れの停滞、あるいは臓腑の機能低下などが原因と考えられています。体質や症状に合わせて、気血の巡りを良くする漢方薬の処方や鍼灸治療などが行われます。

日常生活においては、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、心身の健康を保つことが大切です。また、過労やストレス、睡眠不足なども薄厥の誘因となるため、これらを避けるようにしましょう。もし薄厥を繰り返すようであれば、車の運転や高所作業などは控え、安全な環境を確保することが重要です。医師の指示に従い、日常生活での注意点や予防策についても相談するように心がけましょう。

項目 内容
定義 突然意識を失い倒れてしまう病気。数秒から数分で自然に意識が戻り、後遺症も残らないことが多い。
症状 目の前が暗くなる、めまい、冷や汗、顔面蒼白、吐き気
危険性 倒れた際に頭を打つなど、二次的な怪我の危険性
西洋医学的解釈 一時的な脳への血液供給の不足が主な原因。立ちくらみ、精神的なショック、過呼吸、咳、排尿などが引き金。
東洋医学的解釈 気血の不足や流れの停滞、あるいは臓腑の機能低下などが原因。
東洋医学的治療 気血の巡りを良くする漢方薬の処方や鍼灸治療
日常生活での注意点 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、心身の健康を保つ。過労やストレス、睡眠不足を避ける。薄厥を繰り返す場合は、車の運転や高所作業などを控え、安全な環境を確保する。医師の指示に従い、日常生活での注意点や予防策についても相談する。

薄厥の原因

薄厥の原因

薄厥は、一時的に意識を失うことで、様々な要因が考えられます。大きく分けて、身体の組織に異常がある場合と、機能的な問題による場合があります。身体の組織に異常がある場合は、心臓や脳の血管に問題があることが多く、例えば、心臓の筋肉に血液が十分に行き渡らない狭心症や、心臓のリズムが乱れる不整脈、脳の血管が詰まる脳梗塞などが原因となることがあります。

一方、機能的な問題で薄厥が起こる場合もあります。自律神経のバランスが崩れたり、血管が急に広がったりすることで、脳への血液の流れが一時的に悪くなることが原因です。急に立ち上がった時に血圧が下がる起立性低血圧や、迷走神経という神経の反射によって血管が拡張し、脈が遅くなる血管迷走神経反射などが、この機能的な薄厥の例として挙げられます。

また、体内の水分が不足する脱水や、血液中の赤血球が少なくなる貧血血糖値が下がる低血糖なども薄厥のきっかけとなることがあります。

東洋医学では、これらの原因に加えて、気・血・津液の流れの滞りが薄厥に関係すると考えられています。「気」は生命エネルギーのようなもので、激しい運動や過労で気が不足すると、脳に十分な血液が巡らなくなり、薄厥が起こりやすくなります。また、「血」が不足したり、血の流れが滞る「瘀血」の状態では、全身の血液循環が悪くなり、脳へ酸素が十分に届かなくなるため、薄厥を起こすことがあります。さらに、精神的な負担や強い緊張といった心の状態も、薄厥の誘因となることがあります。心の状態は気の流れにも影響を与え、結果として脳への血流を滞らせる一因となります。このように、薄厥は様々な原因が複雑に絡み合って起こるもので、西洋医学的な検査に加えて、東洋医学的な視点からも原因を探ることが大切です。

薄厥の原因

薄厥の診断

薄厥の診断

薄厥と診断するには、様々な方法を用いて患者さんの状態を詳しく調べることが大切です。まず、問診では、いつ、どのような状況で気が遠くなるのか、その時にどんな症状が現れるのか、他に病気があるか、どのような薬を飲んでいるのかなどを丁寧に尋ねます。

次に、身体を診ます。聴診器を使って心臓の音や脈の打ち方を確かめ、血圧を測ります。そして、神経の働きが正常かどうかを調べます。意識ははっきりしているか、身体はきちんと動かせるか、感覚に異常はないかなどを確認します。さらに詳しく調べる必要がある場合は、心臓の電気的な活動を見る検査や脳の活動を調べる検査、頭の断層写真を撮る検査などを行います。

東洋医学では、西洋医学とは異なる独特な方法で診断を行います。脈診では、脈の力強さ、速さ、リズムなどから、身体のエネルギーや血液の状態、内臓の働き具合を判断します。舌診では、舌の色、形、舌苔の様子から、体の中の水分バランスや熱の状態を判断します。腹診では、お腹の張り具合や押した時の痛みなどを診て、内臓の働きやエネルギーと血液の流れ具合を判断します。これらの方法を組み合わせて、患者さんの体質や病気の状態を全体的に把握します。

診断方法 検査項目 目的
西洋医学 問診 発作の状況、症状、既往歴、服薬状況などを把握
聴診 心臓の音、脈拍を確認
血圧測定 血圧の異常を検出
神経学的検査 意識状態、運動機能、感覚異常などを確認
精密検査 (心電図、脳波検査、頭部CTなど) 心臓の電気的活動、脳の活動、頭部の状態を詳細に検査
東洋医学 脈診 脈の状態からエネルギー、血液、内臓の働きを判断
舌診 舌の状態から水分バランス、熱の状態を判断
腹診 お腹の状態から内臓の働き、エネルギーと血液の流れを判断

薄厥の治療

薄厥の治療

薄厥は、立ちくらみのように一時的に意識が遠のく症状で、様々な原因が考えられます。大きく分けて、心臓や脳の病気が原因で起こるものと、自律神経の乱れなど機能的な原因で起こるものがあります。治療法は原因によって異なり、根本原因への対処が重要です。

心臓や脳の病気、いわゆる器質的な病気が原因の場合は、その病気の治療が最優先となります。例えば、不整脈や脳血管障害などが考えられますので、精密検査を受けて適切な治療を受けることが大切です。

一方、機能性薄厥の場合は、生活習慣の改善が重要になります。例えば、起立性低血圧が原因であれば、水分や塩分を十分に摂り、急に立ち上がらないように心がけることが大切です。また、血管迷走神経反射による失神の場合は、注射や採血、痛み、精神的ストレスなど、誘因となる刺激を避けるようにしましょう。過度の緊張や不安を抱えている場合は、リラックスする工夫も必要です。

東洋医学では、薄厥を気血の不足や流れの滞り自律神経のバランスの乱れとして捉えます。治療には、鍼灸治療、漢方薬、推拿、気功など、様々な方法が用いられます。鍼灸治療は、経穴と呼ばれる特定の場所に鍼やお灸で刺激を与え、気血の流れを調整し、自律神経のバランスを整えます。漢方薬は、個々の体質や症状に合わせて処方され、不足している気血を補ったり、体内の余分な水分や滞りを取り除いたりする効果が期待できます。推拿は、経絡やツボをマッサージすることで、気血の循環を促し、筋肉の緊張を和らげます。気功は、特別な呼吸法や瞑想法を行うことで、心身をリラックスさせ、自律神経の働きを調整します。これらの治療法は、西洋医学的な治療と並行して行うことで、より効果的に症状を改善できる場合もあります。

分類 原因 対処法 東洋医学的解釈 東洋医学的治療法
薄厥 心臓や脳の病気(器質的疾患)
例:不整脈、脳血管障害
精密検査と適切な治療 気血の不足や流れの滞り
自律神経のバランスの乱れ
鍼灸治療:経穴への刺激で気血の流れ調整、自律神経を整える
漢方薬:体質・症状に合わせた処方で気血補給、滞り除去
推拿:経絡・ツボマッサージで気血循環促進、筋肉緊張緩和
気功:呼吸法・瞑想法で心身リラックス、自律神経調整
※西洋医学的治療と並行して行う場合も効果的
機能性
例:起立性低血圧、血管迷走神経反射
生活習慣改善
・水分・塩分摂取
・急な立ち上がりを避ける
・誘因となる刺激を避ける
・リラックスする工夫

日常生活の注意点

日常生活の注意点

めまい、立ちくらみ、眼前が暗くなるといった症状、いわゆる薄厥は、普段の生活での心がけで予防できる場合が多くあります。薄厥を未然に防ぎ、健康な日々を送るために、以下の点に注意しましょう。

まず、規則正しい生活習慣を心がけることが重要です。毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保することで、体のリズムを整えましょう。睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、薄厥を引き起こす要因となります。また、バランスの良い食事も大切です。体に必要な栄養素をしっかりと摂ることで、体の機能を維持し、薄厥の予防につながります。水分不足も薄厥の原因となるため、こまめに水分を補給するようにしましょう。特に暑い時期や運動後は、意識的に水分を摂ることが大切です。

さらに、過度な飲酒や喫煙は避けましょう。これらは血管を収縮させ、血流を悪くするため、薄厥の危険性を高めます。適度な運動は血行促進に効果的ですが、激しい運動はかえって逆効果となる場合もあります。自分の体力に合った軽い運動を継続的に行うようにしましょう。

入浴時は、急激な温度変化に注意が必要です。熱いお湯に長時間浸かったり、急に立ち上がったりすると、血管が拡張し、血圧が急激に低下することがあります。これは薄厥発作の大きな原因となります。入浴はぬるめのお湯で、短時間にとまるように心がけましょう。

最後に、ストレスも薄厥の誘因となります。ストレスをため込まないよう、リラックスできる時間を意識的に作りましょう。趣味に時間を費やしたり、好きな音楽を聴いたり、自然の中でゆったりと過ごすなど、自分に合った方法で心身を休ませることが大切です。

もし薄厥発作が起きた場合は、安全な場所に横になり、足を高く上げて安静にしましょう。衣服を緩めて呼吸を楽にし、周りの人に助けを求めましょう。意識が戻っても、しばらくは安静にして様子を見てください。必要に応じて医療機関を受診し、適切な処置を受けましょう。

カテゴリー 具体的な対策
生活習慣 規則正しい生活
十分な睡眠
バランスの良い食事
こまめな水分補給
生活上の注意点 過度な飲酒・喫煙を避ける
軽い運動
入浴時の急激な温度変化を避ける
ぬるめのお湯で短時間入浴
メンタルヘルス ストレスをため込まない
リラックスできる時間を作る
薄厥発作時の対処法 安全な場所に横になる
足を高く上げて安静にする
衣服を緩めて呼吸を楽にする
助けを求める
意識が戻っても安静にする
必要に応じて医療機関を受診