氣厥:情動と気の逆乱
東洋医学を知りたい
先生、『気厥』ってどういう意味ですか?漢字から何となく想像はできるのですが、もっと詳しく知りたいです。
東洋医学研究家
そうですね。『気厥』は、簡単に言うと、気持ちが乱れることで体に異変が起きる状態のことです。例えば、強い驚きや怒り、恐怖などを経験したときに、急に意識を失ったり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。このような症状を『気厥』と呼びます。
東洋医学を知りたい
なるほど。ということは、精神的なものが原因で体に症状が出るということですね。具体的にはどんな症状がありますか?
東洋医学研究家
そうですね。意識がなくなる、めまい、立ちくらみ、息が苦しくなる、体がしびれる、などが代表的な症状です。これらの症状は一時的なものが多いですが、繰り返すこともあります。また、症状の程度も様々です。
氣厥とは。
東洋医学で使われる言葉『気厥』について説明します。『気厥』とは、気が上に逆流し、さまざまな感情の乱れによって引き起こされる意識障害のことです。
氣厥とは
氣厥とは、東洋医学の考え方に基づく病態の一つで、突然意識を失ってしまう厥の中でも、気の巡りの乱れが主な原因と考えられています。この「気」は、生命エネルギーのようなもので、体中に巡り、体と心の様々な働きを支えています。まるで植物に水をやるように、この気が全身に行き渡ることで、私たちは健康を保つことができるのです。
氣厥は、この気が正常な流れを失い、本来下へ向かうべき気が上に逆流してしまうことで起こると考えられています。激しい喜怒哀楽や、長期にわたる精神的な負担、過労などが引き金となり、気が乱れ、上逆することで様々な症状が現れます。代表的な症状は突然の意識消失ですが、それ以外にも、心臓がドキドキしたり、息が苦しくなったり、目の前がぐるぐる回ったり、冷や汗をかいたり、顔が青白くなるといった症状を伴うこともあります。
これらの症状は、現代医学でいう失神や過呼吸発作と似た部分もありますが、東洋医学では、単なる一時的な意識の消失として捉えるのではなく、体全体の気のバランスが崩れた状態として考えます。西洋医学では症状を抑える対症療法が中心となることが多いですが、東洋医学では、氣厥は体からの大切な警告と捉え、根本的な原因を探り、体質改善を図ることで、再発を防ぐことを目指します。具体的には、気の巡りを整え、心を落ち着かせ、体質を強化する漢方薬や鍼灸治療などが用いられます。日頃から、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、ストレスを溜め込まない生活習慣を送り、心身の調和を保つことが大切です。
情の雑
氣厥は、突然意識を失う発作ですが、その大きな特徴の一つに「情の雑」が挙げられます。これは、精神的な動揺や過剰な感情の起伏が、氣厥の引き金となることを意味します。
人の心には、喜怒哀楽といった様々な感情があります。これらは自然な心の動きですが、度が過ぎたり、逆に抑え込んだりすると、体の中の気の巡りが乱れてしまうのです。気がスムーズに流れなくなると、上へ逆流しやすく、これが氣厥の発作につながると考えられています。
例えば、突然の訃報に接して大きなショックを受けたり、激しい怒りや恐怖を感じた際に、気が乱れて氣厥を起こすことがあります。また、日々の生活の中で積もり積もった精神的な重圧、将来への不安、張り詰めた緊張状態なども、気のバランスを崩し、氣厥の誘因となることがあります。
東洋医学では、心と体は一体と捉えます。心の状態が体の状態に影響を与え、体の状態が心の状態に影響を与えることは、ごく当たり前のことと考えます。そのため、氣厥の治療においては、発作そのものを治めるだけでなく、心の状態を整えることも非常に大切です。心の状態を整えることで、気の巡りを正常にし、氣厥の再発を防ぐことにつながります。
普段から感情のバランスを保ち、過度なストレスをため込まないように気を配ることが、氣厥の予防、そして健康な生活を送る上で重要と言えるでしょう。
気の逆乱
気は、私たちの体の中をくまなく巡り、生命活動を支える大切なものです。本来、気は下に向かって流れ、全身を温め、臓腑の働きを助ける役割を担っています。しかし、様々な要因によってこの気の巡りが乱れることがあります。これを「気の逆乱」と呼び、様々な不調を引き起こす原因となります。
気の逆乱の中でも、特に「上逆」と呼ばれる状態は、気が正常な流れに逆らい、上に昇ってしまう現象です。まるで、水が低いところから高いところへ逆流するように、本来下に向かうべき気が上に昇ってしまうのです。この上逆は、体に様々な影響を及ぼします。
気が頭に上ると、頭に血が上ったような状態になり、めまいやふらつき、ひどい場合には意識を失うこともあります。また、胸に気が滞ると、動悸や息苦しさ、胸の痛みといった症状が現れます。さらに、胃に気が逆流すると、吐き気や嘔吐を引き起こすこともあります。その他にも、顔のほてりやのぼせ、イライラしやすくなる、眠りが浅くなるなど、様々な症状が現れることがあります。
この気の逆乱は、精神的なストレスや過労、不規則な生活習慣、暴飲暴食など、様々な要因によって引き起こされます。特に、怒りや不安、悲しみなどの強い感情は、気を乱しやすく、上逆を引き起こす大きな原因となります。また、体質的に気が虚弱な人や、冷えやすい人も、気の逆乱を起こしやすい傾向があります。
東洋医学では、気の逆乱を整えることが健康を取り戻すための重要な鍵と考えられています。症状に合わせて、鍼灸治療や漢方薬を用いて、気の巡りを正常に戻し、体全体のバランスを整えていくことが大切です。
気の逆乱(上逆) | 症状 | 原因 |
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気の上昇 (本来下に向かうべき気が上に昇る) |
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治療の考え方
氣厥(きけつ)の治療は、体全体の調和を取り戻すことを目指します。東洋医学では、目に見える体の不調だけでなく、心の状態や生活習慣も深く関係すると考えています。氣厥は、気がスムーズに流れず、滞ったり逆流したりすることで起こるとされています。そのため、治療の核となるのは気の巡りを整え、心身のバランスを回復させることです。
具体的な治療法として、鍼灸治療と漢方薬が広く用いられています。鍼灸治療は、体中に張り巡らされた「経絡(けいらく)」と呼ばれる気の道筋に、鍼やお灸で刺激を与えます。ツボと呼ばれる特定の場所に鍼やお灸を施すことで、滞っている気を散らし、流れを良くする効果が期待できます。まるで水路の詰まりを解消するように、スムーズな気の循環を取り戻すのです。
漢方薬は、一人一人の体質や症状に合わせて、多様な生薬を組み合わせて処方されます。例えば、気の巡りを良くする「理気薬(りきやく)」は、停滞した気を動かして流れをスムーズにする働きがあります。また、不安や焦りなど心の不調を和らげる「安神薬(あんしんやく)」は、精神的な落ち着きを取り戻し、気のバランスを整える助けとなります。これらは、体質や症状に合わせて適切に処方されることが重要です。
さらに、日常生活における養生も大切です。規則正しい生活リズムを保ち、バランスの良い食事を摂ることは、体の基礎を整える上で欠かせません。また、過度な緊張やストレスを避けることも重要です。散歩や軽い運動、読書や音楽鑑賞など、心と体をリラックスさせる時間を積極的に取り入れましょう。心の状態と体の状態は互いに影響し合っているため、心身の両面からケアすることで、氣厥の再発予防に繋がります。
予防と養生
氣厥(きけつ)は、精神的なストレスが大きな誘因となります。ですから、氣厥を予防するには、まず精神的な負担をため込まないようにすることが肝要です。心が穏やかで、くつろげる時間を日々の暮らしに取り入れるように心がけましょう。例えば、好きな音楽を聴いたり、読書にふけったり、趣味に没頭したりするなど、心を解放する時間を持つことが大切です。
また、規則正しい生活習慣を保つことも、氣厥の予防には欠かせません。夜更かしをせず、しっかりと睡眠時間を確保することで、心身の疲れを癒やし、健康な状態を維持することができます。食事は、肉や魚、野菜、穀物など、様々な食材をバランス良く摂るようにしましょう。栄養の偏りは、体の調子を崩す原因となり、氣厥を招きやすくなってしまいます。
さらに、適度な運動も氣厥の予防に効果的です。激しい運動は必要ありません。無理のない範囲で、体を動かすことが大切です。たとえば、近所を軽く散歩したり、自宅で簡単な体操やストレッチをするだけでも、気の巡りが良くなり、心身のバランスを整えることができます。
自分の体の状態、心の状態に常に注意を払い、少しでも異変を感じたら、すぐに適切な対応をすることが重要です。氣厥は、早期に適切な養生を行うことで、重症化を防ぐことができます。深く息を吸ってゆっくりと吐き出す腹式呼吸は、気持ちを落ち着かせ、気の巡りを整える効果がありますので、日頃から習慣づけると良いでしょう。辛い物、脂っこい物、刺激の強い物などは控えめにすることも大切です。養生を心がけ、心身ともに健やかな毎日を送りましょう。