めまい:東洋医学からの考察

めまい:東洋医学からの考察

東洋医学を知りたい

先生、『頭暈』ってどういう意味ですか? めまいと同じようなものですか?

東洋医学研究家

いい質問だね。『頭暈』は、めまいと似た症状だけど、東洋医学では特に、目がかすんだり、景色が歪んで見えたり、自分がぐるぐる回っているような感覚があることを指すんだ。西洋医学の『めまい』よりも、視覚の異常を伴う点が特徴と言えるね。

東洋医学を知りたい

なるほど。景色が歪むっていうのがポイントなんですね。回転性のめまいとどう違うんですか?

東洋医学研究家

回転性のめまいは、自分や周囲が動いているように感じる感覚だけど、『頭暈』は、景色が歪んだり、波打つように見えたりする点が異なるんだ。もちろん、回転性のめまいと同時に景色が歪むこともあるので、症状が重なっている場合もあるよ。

頭暈とは。

めまい(目がくらむような感覚とともに、頭の中がぐるぐる回るような感覚が特徴の病気)について

めまいの定義

めまいの定義

めまいとは、周囲がぐるぐると回っているように感じたり、自分自身が回転しているように感じたりする感覚を指します。東洋医学では、この回転する感覚だけでなく、立っていられないような不安定感、目の前が暗くなる感じ、ふわふわと宙に浮いているような感覚なども、全て「めまい」と広く捉えます。

めまいの症状は人によって様々です。平衡感覚が乱れるだけでなく、物が二重に見えたり、ゆがんで見えたりする視覚の異常を伴うこともあります。また、耳の奥で音が鳴る耳鳴りや、吐き気を催すこともしばしばあります。めまいは、時に不安感や恐怖感を伴い、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

めまいの原因も多岐にわたります。一時的な疲労や睡眠不足が原因で起こることもあれば、耳の奥にある内耳の異常が原因となっている場合もあります。また、脳の血管に異常が生じる脳血管障害や、体の機能を調整する自律神経の乱れが原因となることもあります。さらに、ストレスや精神的な緊張貧血や低血圧薬の副作用など、様々な要因が考えられます。

めまいは、重大な病気が隠れているサインである可能性もあります。そのため、めまいが続く場合や、繰り返し起こる場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。特に、激しい頭痛や手足のしびれ、ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は、緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診する必要があります。

東洋医学における「めまい」 回転する感覚、不安定感、目の前が暗くなる感じ、ふわふわと宙に浮いているような感覚
めまいに伴う症状 視覚の異常(物が二重に見える、ゆがんで見える)、耳鳴り、吐き気、不安感、恐怖感
めまいの原因
  • 一時的な疲労、睡眠不足
  • 内耳の異常
  • 脳血管障害
  • 自律神経の乱れ
  • ストレス、精神的な緊張
  • 貧血、低血圧
  • 薬の副作用
重要な注意点
  • 重大な病気のサインの可能性あり
  • めまいが続く場合や繰り返す場合は医療機関を受診
  • 激しい頭痛、手足のしびれ、ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は緊急に受診

東洋医学におけるめまいの考え方

東洋医学におけるめまいの考え方

東洋医学では、めまいは体の根本的なバランスの乱れが原因で起こると考えられています。このバランスは、「気・血・水」という三つの要素で成り立っています。「気」とは、体全体を巡る生命エネルギーのようなものです。呼吸や消化、血液の循環など、生命活動の源と言えるでしょう。「気」が不足すると、体の隅々までエネルギーが行き渡らず、様々な不調が現れます。めまいの場合、脳へ十分なエネルギーが供給されなくなるため、ふらつきや立ちくらみが起こりやすくなります。また、「血」とは、血液だけでなく、血液によって運ばれる栄養も含みます。栄養豊富な血液は、全身の組織や器官を潤し、健康を保つために不可欠です。「血」が不足すると、脳に栄養が行き届かず、めまいだけでなく、顔色が悪くなったり、疲れやすくなったりすることもあります。さらに、「水」とは、血液以外の体液全般を指します。汗や尿、唾液なども「水」に含まれます。体内の水分バランスが適切に保たれていることは、健康維持に非常に重要です。「水」が体内に停滞すると、むくみや冷えが生じ、めまいの原因となることがあります。頭部に水分が偏って滞ると、頭が重く感じたり、回転性のめまいが起こることもあります。これらの「気・血・水」は互いに影響し合い、どれか一つが不足したり、過剰になったりすると、他の要素も連鎖的に乱れていきます。めまいは、この三つの要素のバランスが崩れた結果、体からのサインとして現れる症状の一つなのです。加えて、過労や精神的なストレス、バランスの悪い食事なども「気・血・水」の乱れを招き、めまいを悪化させる要因となります。東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせて、これらの根本原因にアプローチすることで、めまいを改善していきます。

東洋医学におけるめまいの考え方

めまいの種類と原因

めまいの種類と原因

東洋医学では、めまいは単なる症状ではなく、体全体の不調を反映したサインと捉えます。そのため、西洋医学のようにめまいそのものを抑えるのではなく、根本的な原因を特定し、体全体のバランスを整えることで治療を行います。めまいの種類は、症状や原因によって細かく分類されます。

例えば、頭が重く、体がだるい、胃腸が弱く食欲がない、雨の日に症状が悪化するといった症状を伴うめまいは、湿邪(しつじゃ)が原因と考えられます。湿邪とは、体内の水分代謝が滞り、余分な水分が体に溜まっている状態です。まるで体に湿布が貼られたように重だるく感じ、胃腸の働きも弱まります。雨の日は大気中の水分が多いため、湿邪の影響を受けやすく、症状が悪化することがあります。この場合は、水分代謝を促す食材を取り入れたり、体を温めることで改善を目指します。

耳鳴りや難聴、腰や膝の痛み、疲れやすいといった症状を伴うめまいは、腎虚(じんきょ)が原因と考えられます。腎虚とは、生命エネルギーの源である「腎」の働きが衰えている状態です。腎は成長や発育、生殖機能に関わるだけでなく、耳や骨とも密接な関係があります。そのため、腎虚になると耳鳴りや難聴、腰や膝の痛みなどが現れやすく、めまいも起こりやすくなります。この場合は、腎の働きを補う食材を積極的に摂り、質の良い睡眠を心がけることが大切です。

また、イライラや不安感、怒りっぽい、目の充血、不眠といった症状を伴うめまいは、肝火上炎(かんかじょうえん)が原因と考えられます。肝火上炎とは、精神的なストレスや不規則な生活などにより、肝の働きが過剰になり、頭に熱がこもる状態です。「肝」は精神活動や自律神経と深く関わるため、イライラや怒りっぽくなり、頭に熱がこもることでめまいが生じます。この場合は、精神的なストレスを軽減し、肝の働きを鎮める食材を摂り入れることが重要です。

このように、東洋医学では、めまいの症状だけでなく、体全体のバランスや機能に着目し、一人ひとりの体質や状態に合わせた治療を行っていきます。

めまいの種類 症状 原因 対処法
湿邪(しつじゃ) 頭が重く、体がだるい、胃腸が弱く食欲がない、雨の日に症状が悪化 体内の水分代謝が滞り、余分な水分が体に溜まっている状態 水分代謝を促す食材を取り入れたり、体を温める
腎虚(じんきょ) 耳鳴りや難聴、腰や膝の痛み、疲れやすい 生命エネルギーの源である「腎」の働きが衰えている状態 腎の働きを補う食材を積極的に摂り、質の良い睡眠を心がける
肝火上炎(かんかじょうえん) イライラや不安感、怒りっぽい、目の充血、不眠 精神的なストレスや不規則な生活などにより、肝の働きが過剰になり、頭に熱がこもる状態 精神的なストレスを軽減し、肝の働きを鎮める食材を摂り入れる

めまいの治療法

めまいの治療法

めまいは、回転性、浮動性、立ちくらみなど様々な形で現れ、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。東洋医学では、めまいは体全体の調和が乱れた結果であると考え、その根本原因を取り除くことで症状の改善を目指します。単にめまいを抑えるのではなく、体質から改善することで、再発を防ぐことを重視しています。

めまいの原因は、東洋医学では主に「気」「血」「水」のバランスの乱れに帰されます。これらの不足や停滞、偏りによってめまいが生じると考えられています。例えば、「気」の不足、いわゆる「気虚」では、体全体にエネルギーが行き渡らず、軽度のふらつき、倦怠感、息切れなどを伴うめまいが現れやすくなります。このような場合、気を補う人参や黄耆などを含む漢方薬が用いられます。また、「血」の不足、つまり「血虚」は、脳や内耳への栄養供給が不足することでめまいを引き起こすと考えられ、顔色が悪く、疲れやすく、動悸やめまいといった症状が現れます。この場合は、血を補う当帰や芍薬などを含む漢方薬が用いられます。さらに、「水」の停滞、すなわち「水滞」は、体内の水分の代謝が滞り、頭重感、吐き気、めまいなどを引き起こします。この場合は、水の流れを良くする茯苓や沢瀉などを含む漢方薬が用いられます。

漢方薬による体質改善に加え、鍼灸治療も効果的です。鍼灸治療は、経絡と呼ばれるエネルギーの通り道を刺激することで、気の流れを調整し、めまいを改善します。さらに、ツボ療法もめまいに有効です。特定のツボを刺激することで、気の流れをスムーズにし、めまいの症状を和らげます。これらの治療法は、体全体のバランスを整え、自己治癒力を高めることで、根本からめまいを改善することを目指しています。そして、患者さん一人ひとりの体質や症状に合わせたオーダーメイドの治療が提供されることが、東洋医学の大きな特徴と言えるでしょう。

原因 状態 症状 漢方薬 治療法
気虚 気の不足 軽度のふらつき、倦怠感、息切れ 人参、黄耆 漢方薬、鍼灸治療、ツボ療法
血虚 血の不足 顔色が悪く、疲れやすく、動悸やめまい 当帰、芍薬
水滞 水の停滞 頭重感、吐き気、めまい 茯苓、沢瀉

日常生活での注意点

日常生活での注意点

めまいは、日常生活に大きな支障をきたす症状です。めまいを予防・改善するためには、日々の暮らし方を見直すことが重要になります。

まず、規則正しい生活を送りましょう。毎朝同じ時間に起き、夜は十分な睡眠時間を確保することで、体内時計が調整され、自律神経のバランスも整います。自律神経の乱れは、めまいの原因の一つと考えられています。就寝前にカフェインを摂取したり、寝る直前まで明るい場所で過ごしたりするのは避け、質の良い睡眠を心がけましょう。

食事にも気を配りましょう。栄養バランスの取れた食事は、健康な体を維持するために不可欠です。脂っこいものや甘いもの、刺激の強いものは控えめにし、野菜や海藻、豆類など、様々な食材をバランス良く摂り入れるようにしましょう。また、食べ過ぎや飲み過ぎは、胃腸に負担をかけ、めまいを引き起こす原因となることもありますので、腹八分目を心がけましょう。

適度な運動も効果的です。軽い散歩や体操など、無理のない範囲で体を動かすことで、血行が促進され、めまいを予防する効果が期待できます。特に、ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血行を良くし、自律神経のバランスを整える効果も高いとされています。ただし、激しい運動は逆効果となる場合もありますので、自分の体調に合わせて行うことが大切です。

現代社会において、ストレスは避けられないものですが、過剰なストレスは自律神経のバランスを崩し、めまいなどの様々な不調を引き起こす原因となります。趣味や好きなことに時間を費やしたり、ゆったりと音楽を聴いたり、自然の中で過ごすなど、自分なりのリラックス方法を見つけて、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

入浴は、血行促進やリラックス効果が期待できるため、めまいの改善に役立ちます。ぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで、心身ともにリラックスし、自律神経のバランスを整える効果があります。ただし、熱いお湯に長時間浸かることは、かえってめまいを悪化させる可能性がありますので、注意が必要です。

日常生活での注意点

まとめ

まとめ

めまいは、立ちくらみのような軽いものから、周囲がぐるぐると回転しているように感じる激しいものまで、様々な症状があります。その原因も多岐にわたり、耳の病気や脳の病気、自律神経の乱れ、貧血、ストレスなど、実に様々です。西洋医学では、めまいの原因となっている病気を特定し、その病気に合わせた薬物療法や手術療法などが行われます。

一方、東洋医学では、めまいは体全体の気の巡りの滞り、つまりバランスの崩れから生じると考えます。東洋医学では、人間の体は「気・血・水」という3つの要素で成り立っており、これらが滞りなく全身を巡ることで健康が保たれていると考えられています。めまいはこの3つの要素、特に「気」の乱れと深く関わっていると捉えられています。たとえば、過労やストレス、不規則な生活習慣、睡眠不足などは「気」を消耗させ、めまいを引き起こしやすくなると考えられています。

東洋医学の治療では、めまいの根本原因を取り除き、体質改善と自己治癒力の向上を目指します。鍼灸治療では、経穴(ツボ)に鍼やお灸を施すことで、気の巡りを整え、めまいを改善します。漢方薬では、個々の体質や症状に合わせて生薬を調合し、体全体のバランスを整えることで、めまいの根本的な改善を図ります。また、普段の生活習慣の改善も重要です。バランスの良い食事を心がけ、十分な睡眠を取り、適度な運動を行うことで、気を補い、めまいを予防することができます。

めまいは、命に関わるような病気のサインである場合もあります。自己判断は危険ですので、まずは医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。その上で、西洋医学的な治療と並行して、東洋医学的なアプローチを取り入れることで、より効果的にめまいを改善できる可能性があります。

項目 西洋医学 東洋医学
めまいの原因 耳の病気、脳の病気、自律神経の乱れ、貧血、ストレスなど 体全体の気の巡りの滞り、バランスの崩れ(気・血・水の乱れ、特に気の乱れ)
例:過労、ストレス、不規則な生活習慣、睡眠不足
治療法 原因となっている病気に合わせた薬物療法や手術療法 体質改善と自己治癒力の向上
・鍼灸治療:経穴(ツボ)に鍼やお灸を施すことで気の巡りを整える
・漢方薬:個々の体質や症状に合わせて生薬を調合し、体全体のバランスを整える
・生活習慣の改善:バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動
重要な点 自己判断は危険。まずは医療機関を受診し、適切な診断を受ける。西洋医学的治療と並行して東洋医学的アプローチを取り入れることで、より効果的に改善できる可能性がある。