
東洋医学における『裏證』の理解
東洋医学では、人の体の状態や病気の兆候を「證(しょう)」という言葉で表します。この「證」は、体の表面に現れる症状だけでなく、体の中の状態、例えば脈の打ち方、舌の様子、お腹の状態なども含めて総合的に判断されます。その中で、「裏證(りしょう)」とは、体の中に隠れている病気の兆候を指します。
「裏」という言葉は、体の奥深く、表面からは見えない部分を指しています。つまり、裏證とは、体の深い部分、特に五臓六腑と呼ばれる内臓の働きが弱っていたり、気や血の流れが滞っていたり、あるいは骨髄の働きが不足しているなど、体の中の奥深いところに病の原因が潜んでいる状態を言います。
例えば、風邪をひいたばかりの頃は、くしゃみや鼻水、喉の痛みといった体の表面に現れる症状が中心です。これは「表證(ひょうしょう)」と呼ばれます。しかし、風邪が長引いたり、適切な処置をしないと、病邪が体の奥深くに入り込み、咳が長引いたり、熱が続いたりといった状態になります。これが裏證の状態です。
裏證は、風邪のような比較的短期的な病気だけでなく、長い間続いてなかなか治らない慢性的な病気や、病気が進んで深刻な状態になっている場合にも当てはまります。例えば、食欲不振、倦怠感、手足の冷え、めまい、不眠といった症状は、一見すると関連性がないように思えますが、これらは裏證で現れる共通の症状です。
このように、裏證は様々な病気を含む幅広い概念であり、東洋医学で診断を下す上で非常に重要な役割を担っています。裏證を正しく見極めることで、体質や病気の状態に合わせた適切な治療法を選択することができ、健康な状態へと導くことができるのです。