七悪:予後不良を示す七つの徴候

東洋医学を知りたい
先生、『七惡』って東洋医学の用語で何か悪い徴候のことらしいんですけど、一体どんなものなんですか?

東洋医学研究家
そうですね。『七惡』とは、簡単に言うと病気が重篤になる可能性が高いことを示す七つの良くない兆候のことです。具体的には、心、肝、脾、肺、腎という五臓の機能低下、さらに体全体の生命力の衰え、そして気と血という生命活動の源が消耗している状態を指します。

東洋医学を知りたい
五臓の機能低下に加えて、生命力や気血の消耗も含まれるんですね。少し複雑そうですが、七つの兆候それぞれが具体的にどういう状態なのか、もう少し詳しく教えていただけますか?

東洋医学研究家
もちろん。例えば『心不良』は、脈が乱れたり、精神が不安定になったりする状態を指します。『肝不良』は、爪の色が悪くなったり、怒りっぽくなったりするといった状態です。他の五臓も同様に、それぞれの臓器に関連した具体的な症状があります。また、『臓の悪化』は生命力の衰えを、『気と血の消耗』は顔色が悪くなったり、元気がなくなったりする状態を表します。これらが複数見られると、病気が重篤化しやすいと考えられています。
七惡とは。
東洋医学には『七悪』という言葉があります。これは、体の外に現れる病気の兆候のうち、特に治りにくい七つの状態を指します。具体的には、心臓の働きが悪くなること、肝臓の働きが悪くなること、脾臓の働きが悪くなること、肺の働きが悪くなること、腎臓の働きが悪くなること、内臓全体の働きが悪くなること、そして気力と血液が衰えることを指します。
七悪とは

七悪とは、東洋医学において病状の悪化、とりわけ外傷や感染症といった体外からの病気において、治癒が難しいとされる七つの兆候のことです。これは単に症状を並べたものではなく、体全体の生命力が弱まっている状態を総合的に捉えた考え方です。七悪を理解することで、病気の進み具合を深く理解し、適切な治療方針を立てることができます。古くから、医師たちはこれらの兆候を注意深く観察し、患者の回復の見通しを判断する重要な基準としてきました。現代医学の検査数値だけでは捉えきれない、患者の生命力そのものを評価する上で、七悪は現代においても重要な意味を持つと言えるでしょう。
七悪は、具体的には「冷、汗、脈、色、目、息、声」の七つの要素から成り立っています。まず「冷」は、体温の低下を指し、生命力の衰えを端的に示します。次に「汗」は、汗の状態、例えば冷や汗やべたつく汗など、病状の変化を示唆します。そして「脈」は、脈拍の強さや速さ、リズムから、体の状態を読み取ります。さらに「色」は、顔色や皮膚の色つやの変化を観察するものです。また「目」は、目の輝きや焦点、瞳孔の状態などから、生命力の強さを判断します。「息」は、呼吸の状態、例えば荒い息や浅い息などに着目します。最後に「声」は、声の大きさや質、話し方などから、患者の状態を総合的に判断する材料となります。
これらの七つの要素は、それぞれ単独で判断するのではなく、互いに関連づけながら総合的に判断することが重要です。例えば、顔色が悪く、冷や汗をかき、脈が弱く速ければ、生命力が著しく低下していると判断できます。このように、七悪を理解することで、現代医学の検査だけでは見落とされがちな、患者の体全体の変化を捉えることができます。これは、病気の早期発見や適切な治療に繋がり、ひいては患者の生命を守ることに繋がると言えるでしょう。
| 七悪 | 詳細 |
|---|---|
| 冷 | 体温の低下 |
| 汗 | 汗の状態(冷や汗、べたつく汗など) |
| 脈 | 脈拍の強さ、速さ、リズム |
| 色 | 顔色、皮膚の色つや |
| 目 | 目の輝き、焦点、瞳孔の状態 |
| 息 | 呼吸の状態(荒い息、浅い息など) |
| 声 | 声の大きさ、質、話し方 |
心の不調

{東洋医学では、心は単なる臓器ではなく、精神活動を含む生命活動の中枢と考えられています}。心の状態は、全身の機能や健康に大きな影響を与えます。そのため、心の不調は、心臓そのものの問題だけでなく、精神的な不調や意識の混濁、思考力の低下なども含みます。
心の不調が現れると、様々な兆候が見られます。例えば、顔色は青白くなり、唇や爪の色も悪くなることがあります。これは、生命エネルギーである気が不足し、血の巡りが滞っている状態を表しています。また、脈拍は微弱で乱れ、心拍の乱れや動悸なども起こりやすくなります。さらに、精神的な不安定さも特徴で、落ち着きがなく、イライラしやすくなったり、不眠に悩まされたりすることもあります。物忘れや集中力の低下といった認知機能の衰えも心の不調の兆候と言えるでしょう。
東洋医学では、これらの症状は、生命エネルギーの源である心が弱まっていることを示す重要な徴候だと考えます。心の状態は、病気の経過や回復にも大きく影響するため、早期に適切な対応をすることが大切です。心の不調を改善するためには、心身のバランスを整え、気を養うことが重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休息を心がけ、心身をリラックスさせる時間を持つようにしましょう。また、精神的なストレスを軽減することも重要です。趣味や楽しい活動を通して心身の緊張を解き放ち、心の健康を保つように努めましょう。もし症状が続くようであれば、専門家の診察を受けることをお勧めします。
| 心の不調の兆候 | 具体的な症状 | 東洋医学的解釈 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 身体的兆候 | 顔色が青白い、唇や爪の色が悪い | 気不足、血行不良 | 心身のバランスを整え、気を養う バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休息 精神的なストレス軽減 趣味や楽しい活動 専門家の診察 |
| 循環器系の兆候 | 脈拍が微弱で乱れる | 心拍の乱れ、動悸 | |
| 心拍の乱れ、動悸 | |||
| 精神的兆候 | 精神的な不安定さ、落ち着きがない、イライラしやすい | 心(精神活動の中枢)の弱り | |
| 不眠、物忘れ、集中力の低下 |
肝の不調

{肝}は東洋医学において、体中に流れる血を蓄え、必要な時に必要な場所へ送り出すという大切な役割を担っています。まるで体全体の血液の貯蔵庫であり、管理者のような存在です。この肝の働きが滞ると、様々な不調が現れます。
肝の不調を示すサインの一つとして、爪や目の色の変化が挙げられます。健康な爪は薄い桃色で滑らかですが、肝の働きが弱ると爪の色つやが悪くなったり、白っぽくなったり、もろくなって割れやすくなったりします。また、目は心の窓と言われるように、肝の状態を反映する鏡でもあります。目が充血したり、白目が黄色っぽくなったり、視力が低下したりするのも、肝の不調のサインかもしれません。
さらに、筋肉の症状にも注意が必要です。肝は筋の働きを調節する役割も担っているため、肝の不調は筋痙攣(きんけいれん)や震えといった症状を引き起こすことがあります。足がつりやすくなったり、手が震えたりするのは、肝からの警告かもしれません。また、全身の倦怠感やイライラしやすくなるといった精神的な症状も、肝の不調と関連していることがあります。
肝は体の栄養を隅々まで行き渡らせるという重要な役割を担っているため、肝の働きが弱ると、体全体の栄養状態が悪化し、病気に対する抵抗力も低下します。そのため、肝の不調を早期に発見し、適切な養生を行うことが大切です。普段から自分の体と向き合い、爪や目の色、筋肉の状態などに気を配り、少しでも異変を感じたら、専門家に相談することをお勧めします。

脾の不調

東洋医学において、脾は飲食物から栄養分を吸収し、全身に運ぶ重要な臓腑です。現代医学の脾臓とは異なり、消化吸収機能全般を指し、気血の源と考えられています。この脾の働きが弱まると、様々な不調が現れます。
まず、消化吸収機能の低下により、食欲がわかず、食事をしても美味しく感じられなくなります。食べた物がうまく消化されず、胃もたれや膨満感、吐き気などの症状が現れることもあります。また、消化不良によって便がゆるくなり、下痢を起こしやすくなります。反対に、水分代謝が滞ると、むくみを生じることもあります。
脾は気血を生み出す源であるため、脾の働きが弱まると、気血が不足し、全身に栄養が行き渡らなくなります。すると、顔色が悪くなり、疲れやすくなったり、息切れしやすくなったりします。また、手足が冷えやすく、特に女性では月経不順や生理痛などの婦人科系のトラブルにも繋がることがあります。
さらに、脾の不調は、体内の水分代謝にも影響を及ぼします。体内に余分な水分が溜まりやすくなり、むくみや水太りを引き起こすことがあります。また、湿気が体にこもり、頭が重く感じたり、体がだるくなったりすることもあります。
このように、脾の不調は様々な症状を引き起こし、健康を損なう大きな原因となります。日頃からバランスの取れた食事を心がけ、脾の働きを助ける食材を積極的に摂るようにしましょう。また、適度な運動や休息も大切です。脾の働きを整えることで、健康な体を維持することができます。

肺の不調

肺は東洋医学において、体内に清気を取り込み、濁気を排出する重要な役割を担っています。呼吸を通して行われるこの営みは、生命エネルギーである気を全身に行き渡らせる源であり、生命活動の根幹をなすものです。この大切な肺に不調をきたすと、様々な症状が現れます。
最も分かりやすい症状は、呼吸器系の異常です。例えば、呼吸が浅く息苦しさを感じる、空咳が続く、痰が絡む、といった症状が現れます。特に、乾燥した冷たい空気に触れると咳が悪化する場合は、肺の機能が弱まっているサインと言えるでしょう。また、肺は皮膚や鼻と密接な関係があると考えられています。そのため、肺の不調は、肌の乾燥やアレルギー性鼻炎といった症状を併発することもあります。繰り返す鼻詰まりや、肌のかゆみ、乾燥といった症状が見られる場合は、肺の状態に気を配る必要があるでしょう。
肺の不調は、単に呼吸器系の問題にとどまらず、全身の気の巡りにも影響を及ぼします。気は生命エネルギーの源であり、全身を巡って各臓腑の機能を支えています。肺の機能が低下すると、気の取り込みが不足し、全身の気の巡りが滞ってしまいます。すると、倦怠感や食欲不振、気力の低下といった症状が現れ、免疫力の低下にも繋がります。さらに、気の巡りの滞りは、水分の代謝にも影響を与え、むくみを引き起こすこともあります。朝起きた時の顔のむくみや、夕方になると足がむくむといった症状がある場合は、肺の機能が弱まっている可能性も考えられます。
東洋医学では、これらの症状を総合的に捉え、肺の機能を高める治療を行います。症状に合わせて、生薬や鍼灸、按摩などを用いて、肺の機能を回復させ、全身の気の巡りを整えることで、健康な状態へと導きます。

腎の不調

東洋医学では、腎は単なる臓器ではなく、生命エネルギー「精気」を蓄え、成長・発育・生殖をつかさどる重要な役割を担っています。この精気は、両親から受け継いだ先天の精と、日々の食事から得られる後天の精から成り立っています。腎は、この二つの精気をしっかりと蓄え、全身に巡らせることで、わたしたちの生命活動を支えているのです。
腎の働きが弱まると、この精気が不足し、様々な不調が現れます。代表的な症状として、腰や膝の痛み、だるさが挙げられます。腎は骨を主り、腰は腎の府と言われるように、腎の精気が不足すると、骨や筋肉が弱り、腰や膝に力が入らなくなります。また、耳鳴りやめまいも腎の不調のサインです。東洋医学では、耳と目は腎と密接な関係があるとされており、腎の精気が不足すると、耳鳴りやめまいが生じやすくなります。その他、冷え、むくみ、頻尿、夜間尿、白髪、抜け毛、物忘れ、精力減退なども腎の不調を示すサインです。これらの症状は、加齢とともに現れやすいですが、若い世代でも不規則な生活や過労、ストレスなどが原因で腎の働きが弱まり、症状が現れることがあります。
腎の精気の不足は、病気への抵抗力を弱めることにも繋がります。風邪をひきやすくなったり、疲れが取れにくくなったりするのは、腎の精気が不足しているサインかもしれません。腎の働きを良くするためには、バランスの良い食事、適度な運動、質の良い睡眠を心がけることが大切です。特に、黒豆、黒ごま、くるみ、山芋などの黒い食材は、腎を補う効果があるとされています。また、体を温めることも大切です。冷えは腎の働きを弱めるため、冷たい飲み物や食べ物を控え、体を冷やさないように注意しましょう。日頃から腎を労わる生活を心がけることで、健康な毎日を送ることができます。
| 腎の役割 | 生命エネルギー「精気」を蓄え、成長・発育・生殖をつかさどる。両親から受け継いだ先天の精と、日々の食事から得られる後天の精から成り立つ。 |
|---|---|
| 腎の働きが弱まるとどうなるか | 精気が不足し、様々な不調が現れる。 |
| 代表的な症状 | 腰や膝の痛み、だるさ、耳鳴り、めまい、冷え、むくみ、頻尿、夜間尿、白髪、抜け毛、物忘れ、精力減退など。 |
| 腎の精気の不足が引き起こす状態 | 病気への抵抗力の低下(風邪をひきやすくなる、疲れが取れにくいなど) |
| 腎の働きを良くする方法 | バランスの良い食事、適度な運動、質の良い睡眠。特に黒豆、黒ごま、くるみ、山芋などの黒い食材や、体を温めることも効果的。 |
臓腑と気血の衰え

東洋医学では、人間の身体は単なる物質的な存在ではなく、精妙なエネルギーによって機能していると考えられています。このエネルギーは「気」と呼ばれ、全身を巡り、生命活動を支えています。気と並んで重要なのが「血」であり、これは栄養物質を運び、組織を潤す役割を担っています。気と血は互いに影響し合い、どちらか一方の不足や停滞が、もう一方にも悪影響を及ぼします。
この記事で扱う「臓腑」とは、東洋医学独自の概念で、西洋医学の解剖学的な臓器とは異なります。心・肝・脾・肺・腎の五臓と、胆・胃・小腸・大腸・膀胱・三焦の六腑に分けられ、それぞれが特定の機能を担い、互いに連携して生命活動を維持しています。これらの臓腑が正常に機能するためには、十分な気血の供給が不可欠です。
臓腑の機能が衰えると、気血を生み出す力が弱まり、結果として気血の不足を招きます。また、気血が不足すると、臓腑への栄養供給が滞り、臓腑の機能低下をさらに加速させるという悪循環に陥ります。この状態が「臓腑と気血の衰え」であり、東洋医学では「七悪」と呼ばれる重篤な病態の一つに数えられています。
気血が衰えると、様々な症状が現れます。例えば、顔色が悪くなり、皮膚に艶がなくなり、疲れやすくなったり、息切れしやすくなったりします。また、食欲不振、消化不良、便秘、下痢などの消化器系の症状や、不眠、不安、集中力の低下などの精神的な症状も現れることがあります。これらの症状は、臓腑の機能低下と気血の不足が複雑に絡み合って生じるため、単一の治療法では対処が難しく、根本原因である臓腑の機能回復と気血の補充を同時に行う必要があります。東洋医学では、漢方薬や鍼灸治療などを用いて、個々の体質や症状に合わせた治療を行います。
臓腑と気血の衰えは、生命力の低下に直結する深刻な状態です。早期発見と適切な治療が重要となります。日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心掛け、心身の健康を維持することで、臓腑の機能を保ち、気血の巡りを良くすることが大切です。
