記事数:(13)

その他

聞こえの悩み:東洋医学からのアプローチ

耳聾とは、音が聞こえにくくなる、あるいは全く聞こえなくなる状態のことを指します。これは、音の大きさや高さによって感じ方が異なり、かすかにしか聞き取れない軽度の状態から、全く音が聞こえない重度の状態まで、様々な段階があります。日常生活の中で、話し相手の声が聞き取りづらい、テレビの音量を大きくしないと聞こえない、といった症状が現れたら、耳聾の初期段階である可能性も考えられます。この耳聾の原因は実に様々です。年齢を重ねるにつれて耳の機能が衰える加齢性変化や、長期間にわたる大きな音への曝露、遺伝的な体質、中耳炎などの病気、薬の副作用、精神的なストレスなども原因として挙げられます。また、ある日突然聞こえなくなる突発性のものもあれば、ゆっくりと時間をかけて聞こえが悪くなっていくものもあります。耳に違和感や異変を感じたら、速やかに耳鼻咽喉科の専門医に診てもらうことが大切です。耳聾を放置すると、日常生活に様々な支障をきたすだけでなく、円滑な意思疎通が難しくなり、社会生活を送る上で孤立感を抱いてしまう可能性も懸念されます。そのため、早期発見・早期治療が重要となります。医師による丁寧な診察によって、耳垢の詰まり具合や鼓膜の状態、聴力検査などを通して聞こえの状態を詳しく調べてもらい、原因に合わせた適切な治療や対処法を見つけることが重要です。症状によっては、漢方薬を用いた体質改善や鍼灸治療による血行促進、自律神経の調整なども有効な場合があり、東洋医学的なアプローチも選択肢の一つとなります。耳鳴りやめまいを伴う場合もありますので、これらの症状についても医師に相談し、総合的な治療を受けるようにしましょう。耳聾は難聴とも呼ばれます。
その他

耳茸:耳にできる腫瘍について

耳茸とは、耳の穴から鼓膜までの管、つまり外耳道にできるきのこのような形の小さなできもので、正式には耳蕈と呼ばれます。まるで耳の中に小さな茸が生えたように見えることから、この名前がつけられました。耳茸は、外耳道の粘膜から盛り上がったいぼのような病変で、ポリープの一種です。色は赤みを帯びていることが多く、触ると柔らかく、痛みはあまり感じません。この耳茸ができる原因の一つに、外耳道の炎症や細菌、カビなどの感染が挙げられます。耳かきなどで耳の中を傷つけてしまうと、そこから炎症が起こり、耳茸ができることがあります。また、中耳炎などで耳の中に膿が溜まっていると、それも耳茸発生の原因となります。さらに、アトピー性皮膚炎や耳だれを伴う皮膚の湿疹といった皮膚の病気も、耳茸のできやすさに関わっていると考えられています。これらの病気がある方は、耳の中も炎症を起こしやすいため、耳茸ができやすい状態にあると言えます。耳茸自体は痛みを伴わないことが多いのですが、大きくなってくると耳の穴を塞いでしまい、耳が詰まったような感じが生じたり、音が聞こえにくくなることがあります。また、耳茸に細菌やカビが感染すると、耳だれが出てきたり、耳の痛みや熱っぽさを感じたりすることがあります。ほとんどの場合は良性のできものですが、ごくまれに悪性の腫瘍である場合もあります。耳の中に違和感を感じたら、自己判断せずに早めに耳鼻咽喉科で診てもらうことが大切です。医師による適切な診断と治療を受けることで、安心して過ごせるようになります。
その他

耳の中にできるできもの:耳痔

耳痔とは、耳の穴、つまり外耳道にできる小さな突起のことを指します。医学的には結節性乳頭腫と呼ばれ、見た目は小さな瘤のようです。耳掃除を熱心にしすぎた場合や、耳かきで耳の中を傷つけてしまった場合に、この耳痔ができることが多いと考えられています。また、中耳炎などの耳の炎症が長く続いたり、細菌やウイルスによる感染症がきっかけとなって発症することもあります。耳痔の症状として最も多いのは、耳の痛みやかゆみです。耳の中に異物があるような違和感を感じることもあります。さらに、耳が詰まったような感じがしたり、耳鳴りがするといった症状が現れる場合もあります。めまいや吐き気を伴うこともあり、これらは耳の奥にある三半規管という器官への影響が考えられます。ただし、これらの症状は他の耳の病気でも見られるため、自己判断はせず、耳鼻咽喉科で診察を受けることが重要です。耳痔自体は命に関わるような病気ではありません。ほとんどの場合、良性の腫瘍であるため、適切な処置を受ければ治ります。しかし、放置すると徐々に大きくなり、耳の穴を塞いでしまうこともあります。そうなると、耳の聞こえが悪くなるだけでなく、耳掃除がしにくくなり、炎症が悪化してしまう恐れもあります。また、耳鳴りやめまいといった症状が続くことで、日常生活に支障が出ることもあります。そのため、少しでも気になる症状があれば、早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。医師の指示に従って治療を続ければ、ほとんどの場合、完治が期待できます。耳の中に違和感や痛み、かゆみを感じたら、まずは耳鼻咽喉科で診てもらうようにしましょう。自己判断で耳掃除をしたり、市販薬を使用したりすることは、症状を悪化させる可能性があります。専門家の適切な診断と治療が、耳の健康を守る上で最も重要です。
その他

つらい耳だれ、膿耳ってどんな病気?

膿耳とは、耳から膿が出る症状を指します。鼓膜に穴が開いて、そこから耳だれが出てくる病気で、医学用語では耳漏とも呼ばれます。この膿は、細菌やウイルスの感染によって耳の中に炎症が起きることで生じます。中耳炎などが原因で鼓膜に穴が開くと、そこから細菌が入り込みやすくなり、炎症を起こして膿が作られます。膿の色は様々で、黄色や緑色、あるいは茶色っぽいこともあります。また、膿特有のにおいを伴う場合もあります。さらに、膿の量や粘り気も一定ではなく、水のようにさらさらしたものから、粘り気が強いものまで様々です。膿耳になると、痛みやかゆみ、耳が詰まった感じ、聞こえにくいなどの症状が現れることもあり、日常生活に影響を及ぼすこともあります。乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層で発症する可能性があります。特に、体の抵抗力が弱い方や、耳と鼻をつなぐ管である耳管の働きが未発達な子供は膿耳になりやすい傾向があります。耳管は、耳の中を換気し、圧力を調整する役割を担っていますが、子供の耳管は大人に比べて短く、水平に近い形をしているため、細菌が侵入しやすく、炎症を起こしやすいのです。また、免疫力が低下している方も、細菌感染のリスクが高まるため、膿耳になりやすいと言えます。膿耳は自然に治ることもありますが、放置すると重症化し、慢性中耳炎や難聴につながる可能性もあります。そのため、耳だれや耳の痛み、聞こえにくいなどの症状が現れた場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。医師による適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、健康な耳を保つことができます。
その他

耳がつまる!耳脹の症状と東洋医学的アプローチ

耳脹とは、耳が詰まったような、何やら満ちているような感覚を指します。単に耳が詰まるだけでなく、耳の痛みや聞こえにくさを伴うこともあります。まるで水中に潜った後のように、音がぼやけて聞こえにくくなる、自分の声が頭に響く、耳の中で音が鳴り続けるといった様々な症状が現れることもあります。東洋医学では、耳は全身の健康状態を映す鏡と考えられています。そのため、耳脹は単なる耳だけの問題ではなく、体全体の調和が乱れたサインと捉えます。特に、細菌や病原菌の感染ではなく、耳と鼻をつなぐ管である耳管のはたらきの不調で起こる、急性非化膿性中耳炎でこの耳脹がよく見られます。耳管のはたらきが弱まると、耳の中と外気の圧力の均衡が崩れ、鼓膜が内側に引っ張られます。このことで、耳が詰まったような感覚や痛み、聞こえにくさが生じます。まるで綿を詰めたように音が聞こえにくくなることもあります。さらに、耳鳴りや自分の声が響いて聞こえるといった症状が現れることもあります。炎症が進むと、耳から液体が流れ出ることもあります。これらの症状は、風邪や鼻の炎症、鼻の奥にある空洞の炎症などによって、耳管に炎症が起きたり、腫れが生じたりすることで悪化することがあります。耳管の働きを良くすることが、耳脹の改善につながると考えられています。日頃から、鼻のケアを丁寧に行うこと、体の冷えを防ぐこと、十分な休息と栄養をとることが大切です。また、ストレスをため込まないように心身ともにリラックスすることも重要です。
その他

耳垢と耵耳:知っておくべきこと

耳垢は、医学用語で耵聍(ていじょう)と呼ばれ、耳の穴の入り口から鼓膜までの管である外耳道で作られます。この管の皮膚にある耳垢腺から出る分泌物と、皮膚の古い細胞や剥がれ落ちたもの、空気中の塵や埃などが混ざり合ってできます。一見、汚いものと思われがちですが、実は耳の健康を守る上で大切な役割を担っています。まず、耳垢は異物の侵入を防ぐ働きがあります。小さな虫や埃、塵などが耳の奥に入り込むのを物理的に防ぎます。もし、これらの異物が耳の奥に入り込んでしまうと、炎症を起こしたり、鼓膜を傷つける可能性があります。耳垢は、いわば耳の穴の門番と言えるでしょう。次に、耳垢には抗菌・抗カビ作用があります。耳垢に含まれる脂肪酸やリゾチームなどの成分が、細菌やカビの繁殖を抑え、外耳道を清潔に保ちます。これにより、外耳炎などの感染症を予防する効果が期待できます。さらに、耳垢は外耳道の皮膚を保護する役割も果たします。耳垢は適度な油分を含んでおり、外耳道の皮膚を乾燥から守り、滑らかに保ちます。乾燥すると皮膚が傷つきやすくなり、炎症を起こしやすくなってしまいます。耳垢があることで、外耳道を健やかな状態に保つことができるのです。通常、耳垢は自然に排出される仕組みになっています。顎の動きや会話などによって少しずつ外に押し出され、最終的には剥がれ落ちます。そのため、健康な耳であれば、特に耳掃除をする必要はありません。過度な耳掃除は、かえって耳垢を奥に押し込んでしまったり、外耳道を傷つけて炎症を起こす原因となることがあります。耳掃除をする際は、耳の穴の入り口付近を優しく拭き取る程度に留めましょう。
その他

月蝕瘡:耳周りの皮膚トラブル

月蝕瘡とは、耳の周りに現れる皮膚の病気を指します。まるで月の光に焼かれたように、赤みや痒みを伴う湿疹が、耳たぶ、耳の後ろ、耳の穴の周りなどに現れることから、この名前が付けられました。一見すると、ありふれた湿疹やかぶれと見分けがつきにくいのですが、東洋医学では体の内側のアンバランスが肌に表れたものと考えています。そのため、表面的な治療だけで済ませるのではなく、根本的な原因に目を向けることが大切になります。この月蝕瘡は、体に溜まった熱や湿気が原因と考えられています。特に、辛い物や脂っこい物の食べ過ぎ、過度な飲酒、睡眠不足、ストレスなどが熱や湿気を溜め込みやすく、月蝕疮の引き金となると考えられています。これらの生活習慣の乱れは、体の働きを弱め、老廃物をうまく排出できなくなり、結果として熱や湿気が体内にこもってしまうのです。そして、その熱や湿気が上昇し、体の末端である耳の周りに症状として現れると考えられています。東洋医学では、月蝕瘡の治療には、体質改善を目的とした漢方薬の処方が中心となります。熱を取り除く作用のある生薬や、湿気を排出する作用のある生薬などを組み合わせ、個々の体質や症状に合わせて調整します。また、食事療法も大切です。暴飲暴食を避け、消化の良いものを中心にバランスの良い食事を心がけることで、熱や湿気が溜まりにくい体を作ることが重要です。さらに、適度な運動や十分な睡眠も、体の調子を整え、月蝕瘡の改善に繋がります。月蝕疮は、適切な養生を続けることで、再発を防ぎ、健康な状態を維持することが可能です。日々の生活習慣を見直し、体質改善に取り組むことが、月蝕瘡の根本的な解決に繋がると考えられています。
その他

旋耳瘡:耳周りの皮膚トラブル

耳介、つまり耳の周りの皮膚に起こる皮膚の病気、旋耳瘡について詳しく説明します。この病気は、耳の穴の周り、耳たぶの裏側、耳が顔にくっついている部分など、耳介周辺に現れます。特徴的な症状としては、皮膚が赤くなる、強い痒み、じくじくとした汁、時には血が混じる汁、小さな水ぶくれ、かさぶたなどが挙げられます。これらの症状は、一つだけ現れることもあれば、いくつか組み合わさって現れることもあり、日常生活に様々な支障をきたします。まず、強い痒みは旋耳瘡の大きな特徴です。我慢できないほどの痒みのため、無意識のうちに掻きむしってしまい、症状を悪化させ、長引かせる原因となります。掻き壊すことで皮膚のバリア機能が低下し、細菌感染を起こしやすくなるため注意が必要です。また、汁が出てかさぶたになることで、耳の穴が塞がって聞こえにくくなる場合もあります。さらに、耳は顔の一部であり、人目につきやすいという点も大きな問題です。症状が目立つことで、見た目を気にしたり、人との接触を避けたりするなど、精神的な負担を感じる方も少なくありません。旋耳瘡の原因は様々で、アレルギー体質や細菌感染、あるいはストレスや生活習慣の乱れなども関係していると考えられています。症状が長引く場合は、自己判断で市販薬を使うのではなく、医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。医師の診察を受け、適切な薬を処方してもらうことで、症状の改善と再発予防に繋がります。日常生活では、耳周りの清潔を保つこと、刺激の強い石鹸や化粧品の使用を控えること、バランスの良い食事や十分な睡眠を心がけることなども大切です。また、痒みが強い場合は、冷やすことで痒みを抑えることができます。
その他

耳瘡のすべて:原因、症状、治療法

耳瘡は、耳の穴、つまり外耳道に炎症が起きる病気です。鼓膜より奥の中耳に炎症が起きる中耳炎とは異なり、外耳道に限られた炎症です。耳だれ、耳の奥の痛み、かゆみといった症状が現れます。外耳道の皮膚は薄く、刺激に弱いという特徴があります。そのため、様々な要因で炎症を起こしやすく、耳瘡になりやすい場所です。主な原因としては、細菌やカビの感染が挙げられます。また、アレルギー反応や、耳掃除の際に耳かきで外耳道を傷つけてしまうことなども、耳瘡の原因となることがあります。さらに、耳の中に水が入ったままの状態が続くと、細菌が繁殖しやすくなり、耳瘡を引き起こす可能性があります。水泳の後などは特に注意が必要です。耳の中に水が入ってしまった場合は、綿棒などで優しく水分を拭き取るか、自然乾燥させるようにしましょう。無理に耳かきなどを使って水を掻き出そうとすると、外耳道を傷つけてしまい、かえって炎症を悪化させる可能性があります。耳瘡を放置すると、炎症が周囲の組織に広がり、重症化する恐れがあります。例えば、耳の周りの皮膚が赤く腫れ上がったり、リンパ節が腫れたりするといった症状が現れることもあります。また、炎症が長引くと、外耳道が狭くなり、難聴になる可能性も考えられます。耳だれや耳の痛み、かゆみといった症状に気づいたら、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。医師による適切な診察と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、早期に回復へと向かうことができます。自己判断で市販薬などを使用するのではなく、必ず専門家の指示に従って治療を行いましょう。
その他

つらい耳疔:原因と対策

耳疔は、耳の穴、すなわち外耳道にできるおできのことを指します。毛の根元を包む袋である毛嚢に細菌が入り込み、炎症を起こして膿がたまり、腫れます。この炎症は、耳介から鼓膜までの外耳道に生じるため、外耳道炎とも呼ばれます。耳の穴は狭く、皮膚も薄いため、少し腫れただけでも強い痛みや不快感を感じやすい場所です。耳疔になると、耳の奥がズキズキと痛む、耳が詰まった感じがする、といった症状が現れます。炎症が進むと、黄色や緑色の膿が混じった耳だれが出てくることもあります。また、耳に触れると痛みが強まるため、知らず知らずのうちに耳に触れないようにするようになり、日常生活に影響を及ぼすこともあります。さらに、炎症が重くなると、発熱したり、耳の周りのリンパ節が腫れることもありますので、注意が必要です。耳疔の原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌であることが最も多く、その他にも表皮ブドウ球菌などが挙げられます。これらの細菌は、耳かきで耳を傷つけたり、耳垢をいじったりすることで、毛嚢に入り込み、炎症を引き起こします。また、プールや海水浴などで耳に水が入ったまま放置することも、細菌感染のリスクを高めます。さらに、抵抗力が弱っているときにも、耳疔になりやすいと言われています。日頃から、耳を清潔に保ち、耳かきをするときは優しく丁寧に、水が入ったときはしっかり乾かすなど、耳の健康に気を配る習慣を身につけましょう。
その他

五感を司る上竅の働き

上竅とは、東洋医学において、目、耳、口、鼻の四つの感覚器官を指す言葉です。これらは、まるで天窓のように外界と体内をつなぐ大切な入口であり、光や音、味、香りといった様々な情報を体内に取り込みます。この情報をもとに私たちは物を見、音を聞き、味を感じ、匂いを嗅ぎ分け、外界を認識します。東洋医学では、これら四つの感覚器官は単に外界の情報を受け取るだけでなく、体内の状態を映し出す鏡とも考えられています。例えば、目が充血したり乾燥するのは、体の中に熱がこもっているサインかもしれません。また、耳鳴りは、体の水分が不足していたり、腎の働きが弱まっていることを示唆している可能性があります。口が渇くのは、体内の水分が不足しているか、胃に熱がこもっていると考えられます。鼻が詰まるのは、風邪の初期症状であるだけでなく、肺の機能が低下しているサインかもしれません。このように、上竅の状態を観察することで、体内の不調を早期に発見し、適切な養生に繋げることが可能になります。さらに、上竅は精神活動にも深く関わっています。美しい景色を眺めたり、心地よい音楽を聴いたり、美味しい食事を味わったり、良い香りを嗅ぐことで、私たちは喜びや安らぎを感じ、精神的なバランスを整えることができます。逆に、不快な刺激を受け続けると、精神的なストレスとなり、心身の不調に繋がることがあります。ですから、上竅を健やかに保つことは、五感を正常に機能させ、心身の健康を維持するためにとても大切です。日頃から、目に良い食べ物を摂ったり、耳を清潔に保ったり、口の渇きを潤したり、鼻の通りを良くするといった小さな心がけが、健康な毎日へと繋がっていくのです。
その他

感覚の窓口、官竅とは

東洋医学では、外界と体内の情報伝達を担う重要な門戸として「官竅(かんきょう)」という概念を大切にしています。官竅とは、文字通り、体表に開いた管状の穴であり、感覚器官の開口部を指します。具体的には、目、耳、鼻、口、舌の五つがあり、これらは五官とも呼ばれます。それぞれの官竅は、対応する感覚器と密接に結びついており、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感を司り、外界からの情報を体内に取り込む窓口としての役割を担います。例えば、目は外界の光を取り込み、形や色を認識する視覚をつかさどります。耳は空気の振動を音として捉え、周囲の音を聞き取る聴覚を担います。鼻は空気中のにおい物質を感知し、様々な香りを嗅ぎ分ける嗅覚を司ります。口は食物の味を感知する味覚を担うとともに、言葉を発する器官でもあります。舌は食物の味をより細かく識別する味覚と、食べ物を咀嚼したり、言葉を話す際に必要な運動機能を担います。官竅は単なる感覚器官の開口部というだけでなく、生命活動や精神活動にも深く関わっています。東洋医学では、官竅の状態を観察することで、体内の状態や病気の兆候を把握できると考えられています。例えば、目の輝きや濁り、白目の色、耳の聞こえ方、鼻の通気、口の渇き、舌の色や苔の状態などは、健康状態を判断する上で重要な指標となります。これらの変化は、体内の臓腑の働きや気血水のバランスの乱れを反映していると考えられています。つまり、官竅は体内の状態を映し出す鏡と言えるでしょう。官竅の状態を丁寧に観察し、その変化を理解することで、未病の段階で体の不調に気づき、適切な養生を行うことができます。官竅は外界と体内を繋ぐ重要な接点であり、その状態を理解することは、健康維持や病気予防に繋がる大切な要素なのです。
その他

耳と腎臓の深い関係

東洋医学では、人体は個々の部分の集合体としてではなく、全てが繋がり影響し合う全体として捉えます。その中で、耳と腎臓は特別な繋がりを持つと考えられており、「腎は耳に開竅す」という言葉がその関係性を端的に表しています。「開竅す」とは、内臓の気が体表に現れる場所を指し、腎の気が現れる場所が耳であることを意味します。つまり、耳は腎臓の状態を映し出す鏡のようなものだと考えられています。腎は生命エネルギーの源である「精」を蓄え、成長や発育、生殖機能に関わるとされています。この精が不足すると、耳鳴りやめまい、難聴といった耳のトラブルが現れやすくなります。また、老化も精の衰えと関連付けられており、加齢に伴う聴力の低下も腎の機能低下と密接に繋がっていると考えられています。例えば、生まれたばかりの赤ちゃんの耳は柔らかく、精気が満ちている状態を表しています。成長と共に耳は硬くなり、老化と共に精気が衰えると、聴力も衰えていくのです。このように、東洋医学では耳の状態を観察することで腎の健康状態を推測します。例えば、耳が赤く腫れている場合は腎に熱がこもっていると考えられ、耳が青白い場合は腎の気が不足していると判断されます。また、耳鳴りの音によっても原因を探ることができます。高い音の耳鳴りは肝や胆の不調、低い音の耳鳴りは腎の虚弱を示唆している可能性があります。これらの徴候をしっかりと見極めることで、体質や病状を理解し、適切な養生法や治療法を選択することに繋がるのです。日頃から耳の状態に気を配り、腎の健康を保つように心掛けることが大切です。