眞實假虛

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真実は虚偽をまとう:眞實假虛の世界

東洋医学には、一見矛盾しているように見える「眞實假虛」という概念があります。これは、体の中に余分な気や血液、水分などの要素(實)が過剰に存在しているにもかかわらず、まるで気が不足していたり、血が足りなかったりするような、いわゆる虚の症状が表面に出ている状態を指します。例えるならば、栄養が十分に足りている果樹が、根元に大きな石が詰まっているせいで水を吸い上げることができず、葉がしおれてしまっている状態に似ています。一見すると、葉がしおれているので水不足(虚)と考えがちですが、実際には根元の石(實)が問題なのです。このように、眞實假虛の状態では、表面的な症状だけを見て判断すると、誤った治療を施すことになりかねません。例えば、咳が止まらない患者がいるとします。一見すると、体の水分が不足し、肺が乾燥している「肺陰虚」の状態のように見えます。そこで、潤いを与える漢方薬を処方したとします。しかし、もしこの咳の原因が、体内の余分な水分が肺に停滞している「水飲」という實の状態であれば、潤いを与える薬をさらに服用することで、かえって咳が悪化してしまう可能性があります。眞實假虛を見極めるためには、患者さんの体質や症状を詳しく観察し、総合的に判断することが重要です。脈診や舌診、腹診といった東洋医学独特の診察方法に加え、患者さんの生活習慣や食生活、精神状態などについても丁寧に聞き取りを行い、隠された實を見抜く必要があります。表面的な虚の症状に惑わされず、真の原因を見極めることこそ、東洋医学の真髄と言えるでしょう。熟練した医師は、長年の経験と知識を積み重ねることで、この難解な眞實假虛を見抜く眼を養っていくのです。