その他 虚から実への転換:由虚転実
東洋医学では、病気の成り立ちを体本来の力と体に悪い影響を与えるものとの関係で考えます。体本来の力とは、健康を保つ力、生命力を指し、『正気(せいき)』と呼ばれます。正気は、私たちが日々元気に活動し、病気から体を守る盾のようなものです。一方、体に悪い影響を与えるものとは、例えば風邪のウイルスや、寒さ、暑さ、湿気といった外からの影響や、体の中で生じる不調和などです。これらは『邪気(じゃき)』と呼ばれ、私たちの健康を脅かすものとなります。由虚転実(ゆうきゅうてんじつ)とは、この正気と邪気のせり合いで起こる病気の進行過程を表す言葉です。『虚(きょ)』とは、正気が不足している状態を指します。睡眠不足や過労、偏った食事などで体力が落ちている状態です。この時、私たちの体は邪気の侵入を防ぐ力が弱まっているため、風邪などの外邪に侵されやすくなります。そして、邪気が体内で勢いを増し、優位な状態になると『実(じつ)』の状態となります。例えば、高熱や激しい咳、炎症などが現れるのは、まさに邪気が実証している状態といえます。つまり、由虚転実とは、最初は正気が不足した『虚』の状態だったものが、やがて邪気が強まり『実』の状態に変化することを意味します。これは、まるで静かに燃えていた火種が、急に大きな炎となって燃え上がるようなものです。この由虚転実という概念は、病気の経過を理解し、適切な治療法を選択する上で非常に重要な考え方です。正気を養い、邪気を抑えることで、病気の悪化を防ぎ、健康な状態へと導くことができるのです。
