情志

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立ちくらみ

氣厥:情動と気の逆乱

氣厥とは、東洋医学の考え方に基づく病態の一つで、突然意識を失ってしまう厥の中でも、気の巡りの乱れが主な原因と考えられています。この「気」は、生命エネルギーのようなもので、体中に巡り、体と心の様々な働きを支えています。まるで植物に水をやるように、この気が全身に行き渡ることで、私たちは健康を保つことができるのです。氣厥は、この気が正常な流れを失い、本来下へ向かうべき気が上に逆流してしまうことで起こると考えられています。激しい喜怒哀楽や、長期にわたる精神的な負担、過労などが引き金となり、気が乱れ、上逆することで様々な症状が現れます。代表的な症状は突然の意識消失ですが、それ以外にも、心臓がドキドキしたり、息が苦しくなったり、目の前がぐるぐる回ったり、冷や汗をかいたり、顔が青白くなるといった症状を伴うこともあります。これらの症状は、現代医学でいう失神や過呼吸発作と似た部分もありますが、東洋医学では、単なる一時的な意識の消失として捉えるのではなく、体全体の気のバランスが崩れた状態として考えます。西洋医学では症状を抑える対症療法が中心となることが多いですが、東洋医学では、氣厥は体からの大切な警告と捉え、根本的な原因を探り、体質改善を図ることで、再発を防ぐことを目指します。具体的には、気の巡りを整え、心を落ち着かせ、体質を強化する漢方薬や鍼灸治療などが用いられます。日頃から、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、ストレスを溜め込まない生活習慣を送り、心身の調和を保つことが大切です。
その他

心身の不調:内因から紐解く

東洋医学では、病気の原因を大きく三つに分類します。それは、体の外から来るもの、体の中で生まれるもの、そして外でも内でもないものの三つです。この中で、体の中で生まれるものを内因と言います。内因とは、喜怒哀楽といった七つの感情の乱れが主な原因です。これらは人間が誰でも持つ自然な感情ですが、度が過ぎたり、長い間感情を抑え込んだりすると、体のエネルギーである気が滞り、内臓の働きを悪くしてしまいます。例えば、怒りの感情が強すぎると肝の働きが活発になりすぎて、めまいや頭痛、イライラといった症状が現れることがあります。また、深い悲しみは肺の働きを弱め、息苦しさや気力の低下につながると考えられています。さらに、思慮過度、つまり考えすぎは脾を傷つけると言われています。脾とは消化吸収を司る臓腑で、思慮過度になると食欲不振や消化不良を起こしやすくなります。また、心配事や不安を抱え続けると腎に負担がかかり、だるさやむくみなどの症状が現れることもあります。腎は生命エネルギーを蓄える場所で、過度な心配事は生命エネルギーを消耗させてしまうのです。このように、内因は心の状態が体に直接影響を与えることを示しています。心の持ちよう一つで体の状態が変わるという経験は誰にでもあるでしょう。東洋医学ではこの点に注目し、感情のバランスを整えることで心身の健康を保つことを大切にしています。治療においても、患者の心の状態を把握し、心のケアと合わせて体の治療を行うことで、より良い効果を目指しています。