その他 陰虚と血瘀:陰虛血瘀證を知る
陰虚血瘀證とは、東洋医学で用いられる言葉で、体の潤いである陰液が不足する「陰虚」と、血液の流れが滞る「血瘀」という二つの状態が同時に現れることを指します。まるで植物に例えるなら、水分が不足して土壌が乾き、同時に根が詰まって養分を吸い上げられない状態に似ています。まず「陰虚」について説明します。陰液とは、体内のあらゆる組織や器官を潤し、栄養を与え、滑らかに動かす大切なものです。この陰液が不足すると、体の中に熱が生じ、乾燥し、ほてりを感じます。具体的には、肌や口、喉、目が乾いたり、手足の裏がほてったり、寝汗をかいたりといった症状が現れます。まるで乾ききった大地のように、潤いがなく、ひび割れが生じている状態と言えるでしょう。次に「血瘀」について説明します。血瘀とは、血液がスムーズに流れず、滞っている状態です。血液は体中に酸素や栄養を運び、老廃物を回収する役割を担っています。この血液の流れが滞ると、体全体に栄養が行き渡らなくなり、様々な不調が現れます。例えば、肌の色が黒ずんだり、刺すような痛みやしびれ、生理痛がひどかったり、塊が出たりするのも、血瘀のサインです。これは、まるで川の流れが滞り、淀んで濁ってしまう状態と似ています。陰虚血瘀證は、これらの陰虚と血瘀が複雑に絡み合った状態です。陰液が不足することで体に熱が生じ、その熱が血液の流れをさらに悪くし、血瘀を悪化させるという悪循環に陥ることがあります。また、血瘀によって組織や器官に栄養が行き渡らなくなると、陰液の生成にも影響を及ぼし、陰虚をさらに悪化させる可能性があります。このように、陰虚と血瘀は互いに影響し合い、症状を複雑化させるのです。この病態は、更年期障害や慢性疲労症候群、がんなど、様々な病気の背景にあると考えられています。東洋医学では、一人ひとりの体質や症状に合わせて、漢方薬や鍼灸治療などを用いて、陰液を補い、血流を改善することで、陰虚血瘀證の改善を目指します。そして、再び体の中に潤いを取り戻し、滞りのないスムーズな流れを取り戻すことが大切です。
