
陰竭陽脫證:東洋医学における危篤の理解
陰竭陽脫證とは、東洋医学において、生命の危機に瀕した極めて危険な状態を表す言葉です。人間の生命活動は「陰」と「陽」のバランスの上に成り立っています。陰は体の組織や体液など、生命活動を支える物質的な基礎を指し、例えるならば生命の燃料のようなものです。一方、陽は生命活動を支えるエネルギーであり、例えるならばエンジンを動かす力のようなものです。この陰と陽は互いに依存し、支え合っています。
陰竭陽脫證は、まず生命の燃料である陰精が極度に消耗することで起こります。長期間の激しい病気や、過労、大量の出血、慢性的な消耗性疾患などによって、体内の陰精が枯渇してしまうのです。陰精が不足すると、それを土台として活動していた陽気も衰え、維持することができなくなります。まるで燃料が尽きて車が止まるだけでなく、エンジン自体も損傷してしまうような状態です。衰えた陽気は体外に漏れ出て、体温の低下、意識の混濁、呼吸の微弱化といった深刻な症状が現れます。これが陰竭陽脫證の危険な状態です。
陰竭陽脫證は、様々な重篤な病状の末期に現れることが多く、一刻も早い適切な処置が必要です。東洋医学では、速やかに陰を補い、陽気を支える治療を行います。まさに消え入りそうな生命の炎を繋ぎ止めるための、懸命な処置が必要となるのです。