漢方の材料 不足を補う漢方薬:補益剤
東洋医学では、人は生まれながらに「気」「血」「水」と呼ばれる3つの大切な要素を持っており、これらがバランスよく満たされていることで健康が保たれると考えられています。補益剤とは、これら「気」「血」「水」の不足を補い、体の働きを良くする漢方薬のことを指します。まるで植物が太陽の光や水、土の栄養分で育つように、人もまたこれらの要素を必要とします。加齢や働きすぎ、長く続く病気、食事の偏りなどによってこれらの要素が不足すると、様々な不調が現れます。「気」が不足すると、疲れやすくなったり、やる気がなくなったりします。また、「血」が不足すると、顔色が悪くなったり、めまいがしたり、手足がしびれたりします。「水」は体の潤いを保つ大切な要素であり、「陰液」とも呼ばれます。この「陰液」が不足すると、体が乾燥し、のぼせやほてり、寝汗、空咳などの症状が現れます。補益剤はこのような不足を補うことで、体の本来持つ力を引き出し、健康を取り戻すことを目指します。補益剤には様々な種類があり、「気」を補うものを補気剤、「血」を補うものを補血剤、「陰液」を補うものを補陰剤、「陽気」を補うものを補陽剤と呼びます。さらに、それぞれの不足の状態に合わせて、これらの生薬を組み合わせた処方が用いられます。例えば、疲れやすい、息切れしやすいといった「気」の不足には、人参や黄耆などを配合した補気剤が用いられます。顔色が悪い、めまいがするといった「血」の不足には、当帰や芍薬などを配合した補血剤が用いられます。のぼせやほてり、寝汗といった「陰液」の不足には、生地黄や麦門冬などを配合した補陰剤が用いられます。冷えや倦怠感といった「陽気」の不足には、附子や乾姜などを配合した補陽剤が用いられます。このように、一人一人の状態に合わせて適切な補益剤を選ぶことで、より効果的な治療が可能となります。ただし、自己判断で服用することは避け、専門家の指導のもとで使用するようにしましょう。
