
肝火犯肺:怒りと咳の意外な関係
東洋医学では、心と体はつながっていると捉え、感情の乱れが体の不調につながると考えます。肝火犯肺とは、まさにこの考え方を示す代表的な病態です。強い怒りやイライラといった感情の乱れ(肝火)が、呼吸をつかさどる働き(肺)に悪影響を及ぼし、咳や痰といった症状を引き起こす状態を指します。
東洋医学では、肝は感情、特に怒りの感情をつかさどる臓器と考えられています。過剰な怒りは肝に負担をかけ、肝の働きを乱し、肝火を亢進させます。この高ぶった肝火は、本来体の下へ向かう気が逆流し、上に昇って肺を侵すことで様々な症状が現れます。まるで沸騰した湯が吹きこぼれるように、抑えられない感情のエネルギーが肺に押し寄せ、呼吸の機能を邪魔するイメージです。
肝火犯肺の症状として、咳、痰、のどの痛み、息切れなどが挙げられます。また、イライラしやすく、胸のつかえ、不眠といった精神的な症状を伴うこともあります。これらの症状は、感情の起伏によって悪化しやすい傾向があります。
肝火犯肺は、体の不調だけでなく心のストレスも深く関係している病態です。そのため、治療においては、怒りの感情をうまくコントロールすることが重要です。規則正しい生活習慣を心がけ、十分な睡眠と休息を取り、ストレスをため込まないようにすることが大切です。また、精神的な落ち着きを取り戻すために、呼吸法や瞑想なども有効です。肝火を鎮める効果のある食材、例えばセロリや菊花などを食事に取り入れることも良いでしょう。症状が重い場合は、専門家に相談し、適切な漢方薬を処方してもらうことも検討しましょう。