その他 虚実入り交じる病態:虚実夾雑
東洋医学では、体の状態を捉える際に「虚」と「実」という考え方を使います。簡単に言うと、「虚」は体の活力が不足している状態を指し、「実」は体に悪い影響を与えるものが過剰になっている状態を指します。この「虚」と「実」が複雑に絡み合った状態が、いわゆる「虚実夾雑」です。例えば、風邪をひいたときのことを考えてみましょう。ひき始めは、熱が出て咳き込むなど、勢いのある症状が出ます。これは、体に侵入してきた風邪の邪気が強い「実」の状態です。しかし、風邪が長引くと、だるさや食欲不振といった、体の活力が落ちていることを示す症状も現れてきます。これは「虚」の状態です。このように、一つの病気の中で「実」と「虚」の両方の側面が見られるとき、これを「虚実夾雑」と言います。「虚実夾雑」は、病気が慢性化したときによく見られます。慢性化すると、体の抵抗力(正気)が弱まり「虚」の状態になりやすい一方、病気を引き起こす原因(邪気)はまだ体内に残っているため「実」の状態も続くからです。まるで綱引きのように、体の中で「虚」と「実」がせめぎ合っている状態と言えるでしょう。この「虚実夾雑」の状態を理解することは、治療においてとても大切です。「実」の状態には、悪いものを取り除く治療、「虚」の状態には、体の活力を補う治療が必要になります。もし「虚実夾雑」を見誤って「実」の状態に「実」の治療を施すと、かえって体の活力を弱めてしまうかもしれません。反対に、「虚」の状態に「虚」の治療ばかりを施しても、病気を引き起こす原因を取り除くことができず、病気が長引いてしまうかもしれません。「虚」と「実」のどちらの側面が強く出ているのか、また、どのように変化していくのかをしっかりと見極め、適切な治療を行うことが重要になります。
