筋肉に鍼を刺す治療:その効果と利点

東洋医学を知りたい
先生、『筋肉刺鍼』って初めて聞きました。どんな治療法なんですか?

東洋医学研究家
筋肉刺鍼は、簡単に言うと、筋肉の奥深くにある凝り固まった部分に鍼を刺して刺激を与える治療法だよ。特に、神経の働きが原因で起こる長く続く痛みに効果があると言われているんだ。

東洋医学を知りたい
奥深くの凝り固まった部分ですか?普通の鍼治療とどう違うんですか?

東洋医学研究家
そうだね。普通の鍼治療は、ツボを刺激することが多いけど、筋肉刺鍼は痛みの引き金になっている筋肉の奥深くの凝り、専門的には筋膜性トリガーポイントと呼ばれる部分を直接刺激する点が異なるんだ。西洋医学では、『needling myofascial trigger points』とも呼ばれているよ。
筋肉刺鍼とは。
東洋医学の治療法の一つに『筋肉刺鍼』というものがあります。これは、体の奥深くにある筋肉が縮こまってしまうことに対して、鍼(はり)で刺激を与える治療法です。特に、神経が原因となっている長く続く痛みに効果があるとされています。西洋医学では、『筋膜のトリガーポイントへの鍼治療』とも呼ばれています。
筋肉刺鍼とは

筋肉刺鍼は、鍼治療の中でも、筋肉の奥深くにある深層筋に直接鍼を刺す治療法です。肩こりや腰痛といった、慢性的な痛みや凝りに悩む多くの人々に用いられています。この治療法は、筋肉の硬くなった部分や緊張を和らげ、痛みを根本から改善することを目指しています。
特に、神経が過剰に興奮していたり、圧迫されていることで起こる慢性的な痛みには、高い効果が期待できると言われています。西洋医学では、トリガーポイント鍼療法、または筋膜性疼痛症候群に対する鍼治療と呼ばれ、近年注目を集めています。
筋肉に鍼を刺すことで、まず血液の流れが良くなります。新鮮な血液が筋肉に行き渡ることで、筋肉に溜まった老廃物が流れ出し、硬くなった筋肉が柔らかくなります。また、酸素供給も盛んになるため、筋肉の機能回復が促されます。
さらに、鍼の刺激は神経の働きを整える効果も持っています。痛みを伝える神経の興奮を抑え、痛みを引き起こす物質の放出を抑制することで、痛みを和らげます。
筋肉刺鍼は、肩こり、腰痛、膝の痛み、頭痛など、様々な痛みに効果を発揮します。西洋医学では原因不明とされる痛みにも、筋肉の緊張や血行不良が関わっていることが多く、筋肉刺鍼によって改善が見込める可能性があります。ただし、症状によっては効果が期待できない場合もあるので、まずは専門家にご相談ください。

痛みの軽減効果

痛みは、日常生活において大きな負担となるものです。西洋医学では痛み止めを用いることが多いですが、東洋医学では、鍼治療によって痛みを根本から改善することを目指します。中でも筋肉に鍼を刺す筋肉刺鍼は、様々な痛みに効果を発揮します。
慢性的な腰の痛みや肩のこり、頭の痛みなどは、多くの人が悩まされている症状です。西洋医学では、これらの痛みは筋肉の緊張や血行の悪さ、神経の圧迫などが原因と考えられています。筋肉刺鍼は、これらの原因に直接働きかけることで、痛みを和らげます。
鍼を刺すことで、筋肉の緊張が緩和され、血行が促進されます。血行が良くなると、筋肉や神経に酸素や栄養が十分に行き渡るようになり、痛みの原因物質が排出されやすくなります。また、鍼刺激は神経の働きにも影響を与えます。自律神経のバランスが整い、リラックス効果も得られます。
鍼治療の際、脳内ではエンドルフィンという物質が分泌されます。エンドルフィンは、幸福感をもたらす神経伝達物質であり、モルヒネの数倍もの痛みを抑える作用があると言われています。さらに、エンドルフィンには自然治癒力を高める効果も期待できます。そのため、身体本来の回復力を高め、痛みを繰り返さない体づくりを目指せます。
痛み止めの薬を飲むことに抵抗がある方や、副作用が気になる方にも、筋肉刺鍼はおすすめの治療法です。副作用が少なく、体に優しい治療法として、古くから受け継がれてきました。痛みの根本原因にアプローチすることで、症状の改善だけでなく、再発予防も期待できます。
自律神経の調整効果

筋肉を鍼で刺激する治療法は、自律神経のバランスを調整する効果が期待できます。自律神経は、呼吸や消化、体温調節など、体の様々な機能を意識せずに調節している神経系です。この自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経の二つの系統から成り立っています。
現代社会においては、過剰な仕事や不規則な生活習慣、人間関係の悩みなど、様々なストレスに晒される機会が多く、自律神経のバランスが乱れやすいと言われています。自律神経のバランスが崩れると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなり、体に様々な不調が現れます。例えば、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めてしまう不眠、便通が滞る便秘、手足が冷えてしまう冷え性、体がふわふわと浮いているような感覚に陥るめまいなど、多岐にわたる症状が現れることがあります。
筋肉に鍼を刺す治療法は、自律神経の働きを調整することで、これらの症状を改善する効果があるとされています。鍼の刺激は、皮膚や筋肉にある感覚受容器を刺激し、その刺激が神経を伝って脳に伝わります。脳は鍼の刺激に対して、心身をリラックスさせる物質を分泌します。これにより、緊張状態にあった体が緩み、自律神経のバランスが整えられると考えられています。また、鍼治療は単に症状を和らげるだけでなく、病気になりにくい体質を作る効果も期待できます。心身ともに健康な状態を保つために、筋肉への鍼治療は有効な手段の一つと言えるでしょう。
| 鍼治療の対象 | 効果 | メカニズム | 関連症状 |
|---|---|---|---|
| 筋肉 | 自律神経のバランス調整 症状改善 体質改善 |
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施術の流れと注意点

当院の施術は、まずじっくりとお話を伺うことから始まります。現在の症状はもちろんのこと、過去の病気や怪我、普段の生活の様子、お仕事での姿勢や癖、睡眠時間や食事内容まで、細かくお尋ねいたします。これは、お体の状態を全体的に把握し、痛みや不調の根本原因を探るためにとても大切なことだからです。
問診の後は、実際に体に触れて状態を確認する触診を行います。筋肉の張り具合や硬さ、押した時の痛みや感覚、お体の左右のバランスなどを丁寧に調べます。痛みや不調を感じている部分だけでなく、関連する他の部位も入念に診ていきます。例えば、肩の痛みであっても、首や背中、腕の状態も確認することで、真の原因を特定することができるのです。
触診によって痛みの原因となっている筋肉が特定できたら、いよいよ施術に入ります。使用する鍼は髪の毛ほどの細さで、痛みはほとんど感じません。初めての方でも安心して受けていただけます。特定の筋肉に鍼を刺入し、筋肉の緊張を緩め、血行を良くすることで、痛みや不調を和らげていきます。鍼は数分から数十分そのままにしておき、その後、丁寧に抜いていきます。
施術後は、まれにだるさや眠気、軽い痛みを感じる場合がありますが、これは好転反応と呼ばれるもので、体が回復に向かう過程で一時的に現れるものです。多くの場合、数時間から数日で自然に治まります。もしご心配な場合は、お気軽にご相談ください。
妊娠中の方、出血しやすい方、心臓に持病のある方、その他健康状態に不安のある方は、施術を受ける前に医師にご相談いただくことをお勧めいたします。また、施術を受ける際は、ゆったりとした服装でお越しください。
| 段階 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 問診 | 現在の症状、過去の病歴、生活習慣、仕事内容、睡眠、食事など詳細な聞き取り | 身体の状態を全体的に把握し、痛みや不調の根本原因を探る |
| 触診 | 筋肉の張りや硬さ、押した時の痛みや感覚、体のバランスなどを確認。痛みのある部分だけでなく関連部位も確認 | 痛みの原因となっている筋肉を特定 |
| 施術(鍼) | 髪の毛ほどの細い鍼を特定の筋肉に刺入 | 筋肉の緊張を緩め、血行を良くし、痛みや不調を和らげる |
| 施術後 | だるさ、眠気、軽い痛み(好転反応)が出ることがある | 数時間から数日で自然に治まる |
| 注意事項 | 妊娠中、出血しやすい方、心臓に持病のある方などは医師に相談が必要。ゆったりとした服装で来院 | 安全に施術を受けるため |
他の治療法との組み合わせ

筋肉を鍼で刺激する治療は、他の治療方法と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。単独で行うよりも、様々な方法を併用することで、多角的に体の不調に働きかけることができるからです。
例えば、あんまや指圧といったマッサージ療法と組み合わせることで、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進し、より効果的に痛みが和らぐでしょう。凝り固まった筋肉を鍼で刺激する前に、マッサージで筋肉をほぐしておくことで、鍼の効果がより高まります。また、マッサージによって血行が促進されることで、鍼の刺激による老廃物の排出も促されます。
さらに、骨格のゆがみを整える整体療法と組み合わせるのも良いでしょう。整体で骨格のゆがみを整え、姿勢を良くすることで、痛みの根本原因にアプローチできます。筋肉の痛みは、骨格のゆがみから来ている場合も多いので、鍼治療と整体を併用することで、より効果的に痛みを改善し、再発を防ぐ効果も期待できます。
また、体の内側から調子を整える漢方薬と組み合わせるのも有効です。漢方薬は、自然の生薬を用いて体のバランスを整え、自然治癒力を高める効果があります。鍼治療と漢方薬を併用することで、体の内側と外側の両方からアプローチし、相乗効果によってより高い効果が期待できます。
このように、筋肉を鍼で刺激する治療は、他の治療方法と組み合わせることで、それぞれの治療法の利点を活かし、より効果的に症状を改善することができます。自分自身の体の状態や症状に合わせて、最適な組み合わせを見つけることが大切です。
| 組み合わせる治療法 | 相乗効果 |
|---|---|
| あんま・指圧(マッサージ療法) | 筋肉の柔軟性向上、血行促進、老廃物排出促進 |
| 整体療法 | 骨格のゆがみ矯正、姿勢改善、痛みの根本原因へのアプローチ |
| 漢方薬 | 自然治癒力向上、体のバランス調整、内側からのアプローチ |
まとめ

幾つもの筋肉が重なり合う体の奥深くにある筋肉、いわゆる深部筋に鍼を刺す治療法を筋肉刺鍼といいます。この治療法は、痛みを和らげる効果に加え、自律神経のバランスを整える効果も期待できるため、近年注目を集めています。
慢性的な痛み、例えば、肩こりや腰痛に悩まされている方は少なくありません。これらの痛みは、日常生活の質を低下させる大きな要因となります。筋肉刺鍼は、こうした慢性的な痛みに効果を発揮します。深部筋に直接鍼を刺すことで、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、痛みを根本から改善へと導きます。
また、現代社会のストレスは、自律神経のバランスを崩しやすく、様々な不調を引き起こします。めまいや動悸、不眠、便秘、倦怠感など、これらの症状に思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。筋肉刺鍼は、自律神経のバランスを整える効果も期待できます。鍼の刺激が自律神経に働きかけ、乱れたリズムを整え、心身の調和を取り戻す助けとなります。
薬のような副作用はほとんどなく、安全性が高い治療法であることも筋肉刺鍼の大きな利点です。体に負担をかけることなく、自然治癒力を高めることで、健康な体へと導きます。ただし、施術を受ける際には、経験豊富な鍼灸師を選ぶことが重要です。体の構造を熟知し、的確な場所に鍼を刺す技術を持った鍼灸師でなければ、効果が十分に得られないばかりか、体に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。施術を受ける前に、しっかりと相談し、疑問や不安を解消しておきましょう。体の状態や痛みの原因は人それぞれですので、個別の症状に合わせた適切な治療を受けることが重要です。筋肉刺鍼は、健康な体を取り戻し、より良い生活を送るための一つの選択肢となるでしょう。

